幼魚と逆罰 ｰ参ｰ ページ25
高専の地下。薄暗い廊下。
Aと七海は向かい合って険しい顔をしていた。といっても、七海はサングラスをしているため表情まではわからなかったが、いい表情ではないことだけはたしかだ。
「あたしは足手まといなの？ ナナミン。怪我してるんでしょ。……今度はあたしも連れてって」
壁にもたれかかり、腕を組む七海は黙ってAを見つめる。
サングラスをかけていてもわかる視線に、Aは一瞬怯む。だがここで黙っているわけにはいかなかった。
七海が恐らくこの事件の親玉である継ぎ接ぎの呪霊と戦い、負傷したことは伊地知から聞いていた。
最初から彼は親玉と戦うつもりだったのだ。
だから、Aを連れず、一人で親玉のもとへ向かった。
これは、書類上は七海の任務だ。
しかしAだって呪術師を目指している者。Aの任務でもあった。
なのに七海はAになにも言わずに行ってしまった。それが悔しくて、Aは歯を食いしばった。
「仲間が死にました。でもあたしはそこにいませんでした。なぜならあたしは子どもだからです。……なんて、あたしはゴメンだね」
「ダメです」
七海は組んでいた腕を解き、きっぱりと首を横に振った。
「知っての通り、相手は改造した人間を使う。どうしようもない人間というのは存在します。この仕事をしている限り、君もいつか人を殺さなければいけないときがくる」
するりと、七海は左手で右脇腹のゴワゴワとした包帯の感触を服越しになぞる。
「でもそれは今ではない」
あれだけ強気だったAの瞳が下を向く。
「理解してください」
大人と子ども。
それは決して乗り越えられない壁だ。
七海がどれだけ努力をしても、最強である五条に届かないように、その事実は動かせない。
「子どもであるということは決して罪ではない」
七海は壁にもたれていた背を剥がした。
「君にはこれから吉野順平の監視をお願いします」
俯き、なにも言わないAの横を通り過ぎる。
彼女の快活な声が聞こえることはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 709人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます！私もこの2人が大好きなんです〜！応援ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年1月13日 23時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください！！！ (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊 | 作成日時：2021年1月6日 0時
