すべてを肯定するよ ページ16
「吉野ぉ」
間延びした声が順平の耳に届いた。
じわじわと肌を覆われるような暑さに不快感を感じながら家へ帰っていたときだ。
聞こえてきた声に顔を上げれば、家の前で一人の小太りの男が座っていた。
「ダメじゃないか、学校サボって」
「外村、先生……」
高校の担任の教師だ。
滝のように流れでる汗をハンカチで拭いながら荒い息をひっきりなしに繰り返している。
「聞いたか? 佐山、西村、本田、亡くなったって」
順平はきゅっと唇を結んだ。
この教師が言った三人は、順平をいじめていた連中だ。そして、映画館で死亡した連中だ。憎くて仕方がない連中だ。
「おまえ、仲良かったよなぁ」
「は?」
つぐんだ唇は呆気なく開き、単音をもらした。
それは純粋な驚き。ぐるりと天と地が逆さまになったような衝撃。
「友だちもいないおまえをよく構ってやってたろ。それなのに葬式にも出ないで……」
――なにを、言っているんだ?
構っていた? あれが?
理不尽なことで何度も殴られた。煙草を何度も額に押しつけられた。見たこともない虫を何度も食べさせられた。
それを、この男は構っていたの一言で片づけたのか?
「一緒に行ってやるから、線香だけでも上げに行こう」
正気じゃない。
「教師って」
口が勝手に動く。
「学校卒業して学校に勤めるから、おおよそ社会と呼べるものを経験してないですよね?」
どいつも、こいつも。
「だからアンタみたいな、デカい子どもができあがるんでしょうね」
――俺は順平のすべてを肯定するよ
「なにをブツブツ言ってんだ? 引きこもっておかしくなったか? なんて、ははっ」
体の内側から怒りが噴き出した。
怒りのみが身を、思考を支配する。
順平は指先に呪力を溜めた。
「ストォーーーーップ!!!」
順平の視界の端に、季節外れの桜色が舞った。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時