霊安室 ページ1
.
夏の暑さはまだ残っていた。
にも関わらず、そこはとても寒い。
長袖を着ていても、寒いと感じるくらいだ。
目の下にクマを作った少女は、はぁ、と息を吐く。
いくつか並ぶ黒い布をかぶった物体。
そのうちの一つを、少女は見つめていた。
あの中身を知っている。
見てはいないが、わかるのだ。
涙は出なかった。
感情が枯れてしまったのかというくらいに。
でも心の中のどろどろとした黒い感情は消えてはくれなかった。
目の前で散った命。
すがりつく手は地面に落ちて。
涙を流す瞳が頭にこびりついて離れなかった。
「…………ごめん、順平」
助けられなくて。
「……ごめん」
もっとほかの未来があったかもしれない。
結局私は変わらないまま。
だれも救えないまま。
助けられないまま、終わった。
出入口のドアが開いた。
足音だけで、だれが来たのかがわかる。
だが今の少女に顔を上げる気力はなかった。
「……説教?」
「嫌なら、突き放しても構いません」
優しい声だった。
肩に回された手は限りなく優しくて。
遠慮がちに体を引き寄せられる。
抗うこともなく、少女はそのまま男の内に収まった。
心音が聞こえる
生きている
私も、彼も。
「ここに、助けた命があることを忘れないでください」
――あぁ
涙が溢れて止まらない。
.
709人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柊 | 作成日時:2021年1月6日 0時