七海建人は語る ページ28
一度東堂の術式は経験した。
相手と入れ替わる瞬間はゾッとするが、やって行くうちに慣れるだろう。
「相手が慣れる前に仕留めるぞ」
東堂の言葉に頷き、走り出した。
タイムアタック。
やられる前にやるだけだ。
「ちなみに」
Aの目の端に東堂が手を叩くのが見えた。
見えた瞬間、見ている景色がパッと変わる。
「手を」
変わる
「叩くのが」
変わる
「発動条件だ」
花御の眼前に、拳を振り上げた。
拳を打ち、東堂と場所を変わり、また拳を打つ。
花御の体がかくんっと地面に沈んだ。
東堂の殴りのおかげだ。その隙を見逃すはずもなく、Aはシィィ――、と息を吐いた。
Aの目が、閃いた。
――黒閃連続発生記録保持者、七海建人は語る。
コトリ、とコーヒーカップをソーサーに戻し、彼は足を組んだ。
「黒閃を連続で出すのが凄いわけじゃない。二回以上出すなら連続……またはその日の内でないと難しいでしょう」
七海の前に座り、キラキラと目を輝かせる後輩、猪野琢真は手元のメロンソーダのグラスを越えるように身を乗り出した。
「一回目の理由はまぐれでも実力でもなんでもいい。黒閃をキメると術師は一時的にアスリートでいうゾーンに入った状態になる」
普段意図的に行っている呪力操作が呼吸のように自然に廻る。
自分以外のすべてが自分中心に立ち回っているかのような全能感。
「私の記録ですか？ 四回。運が良かっただけですよ」
自然体のまま、呪力が体を廻っていく。
世界が一気に明るくなったような感覚。
Aは不思議と笑みが腹の奥からふつふつと湧いてくるのを感じた。
握りしめた拳から黒の光がほとばしる。
腹にめり込んだ拳は強く、強く、花御の体を貫いた。何度も、何度も、何度も。
花御の背後に東堂が忍び寄る。手を掲げ、術式を発動しようと手を叩いた。
パンッ！ と軽やかに手が鳴る。
真後ろの東堂と入れ替わったであろうAを警戒しようと上半身をねじった。
しかし、そこに桜色の髪の少女はいなかった。
「手を叩いたって術式を発動するとは限らない。単純だけど引っかかるよな」
不敵に笑う東堂の顔が目に映る。
直後、四度目の黒い光が花御を穿った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 926人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - あーさーさん» あーさーさん、コメントありがとうございます！虎杖ちゃんかわいいですよね！そう言っていただけて嬉しいです！オチはナナミンで決定しています。今のところ伏黒くんルートは考えておりません……。申し訳ないです汗 更新がんばります！ (2021年6月5日 7時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
あーさー(プロフ) - コメント失礼します！虎杖ちゃんが可愛すぎませんか？？もうこれは推すしかないなぁと思いました！落ちはナナミンで決定ですか？もしよければ恵ルートを書いて頂けないでしょうか．．．あくまでも一意見なので無視してもらっても全然大丈夫です！更新楽しみにしてます！ (2021年6月5日 0時) (レス) id: 300c895943 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - すぴさん» すぴさん、コメントありがとうございます！一気読みもありがとうございます！うれしいです！東堂くんとの会話は書いてて私も楽しいです！この先もハチャメチャになる、かも……！これからもよろしくお願いします！ (2021年4月30日 13時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
すぴ(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！東堂くんとの会話めちゃくちゃ面白くて好きです！更新楽しみにしてます^ ^ (2021年4月30日 9時) (レス) id: 4a1a097f66 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 餅さん» 餅さんコメントありがとうございます！一気読み……ありがとうございます！虎杖ちゃんかわいいですよね！東堂くんとの絡み、かなりハチャメチャになりそうです笑 応援ありがとうございます！ (2021年4月18日 19時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊 | 作成日時：2021年3月7日 0時
