呪いの王を宿した少女ｰ２ｰ〈呪術廻戦／成り代わり〉 (ページ25)

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縛りページ25

「完璧に入ったと思ったのに！！」

なんとか顔を出し、Aは悔しさ混じりに咳き込む。

上から降ってくる気配に気づいたときにはもう遅い。
再びAの顔面は水に突っ込んだ。

「ここはあの世ではない。俺の生得領域だ」

降ってきたのは宿儺。
Aの背中を椅子替わりにしているのも宿儺。
そのまま話し始めたのも宿儺。

ギリギリとAは歯を食いしばった。ムカつく。

「心の中と言い換えてもいい」
「……じゃあ」
「あぁ。俺たちはまだ死んでいない」

Aは目だけで宿儺を振り返った。

宿儺は相変わらず腹の立つ笑みをその顔に浮かべている。

「オマエが条件を呑めば心臓を治し生き返らせてやる」
「散々イキッといて結局お前も死にたくないんでしょ？」

仕返しだ、とでも言うようにAは精一杯の嘲りを宿儺に見せつける。
それに宿儺は鼻を鳴らし、座る力を少し強めた。

「ぐえっ」
「事情が変わったのだ。近いうち、面白いモノが見られるぞ」

宿儺の脳裏になにがいるのか。
Aにはわからなかったが、ただ黙ったままだ。肝心の条件をまだ聞いていない。

「条件は二つ」

①宿儺が「契闊」と唱えたら一分間体を明け渡すこと。
②この約束を忘れること。

「ダメ。なにが目的か知らんけど、きな臭すぎる」

Aは即答でその条件を否定した。

今回のことでようやく理解した。
両面宿儺は邪悪だと。

「もう二度と体は貸さない」
「……ならばその一分間だれも傷つけんし殺さんと約束しよう。はぁぁああうざ」
「信じられるか！！」

これ見よがしなため息にAはぎゅっと顔をしかめた。

「信じる信じないの話ではない。これは縛り。契約だ。守らねば罰を受けるのは俺。身に余る私益を貪れば報いを受ける。それは小娘か身をもって知っているはずだ」

Aはなにも答えなかった。

「利害による縛り。呪術における重要な因子の一つだ」
「……わかった。条件を呑む」

素直なAの言葉に宿儺は腰を上げた。刹那、起き上がったAの右拳が今度こそ顔面にヒットした。

体が吹き飛び、宿儺はぺっと口の中の血を吐き出す。

「なーんて言うとでも思ったか。無条件で生き返らせろ」
「……ではこうしよう」

宿儺は俯いたまま言った。

「今から殺し合い、小娘が勝てば無条件で。俺が勝てば俺の縛りで生き返る」

本領発揮だ。とAは笑みを浮かべた。

「いいぜ。ボコボコに――」