呪いの王を宿した少女ｰ２ｰ〈呪術廻戦／成り代わり〉 (ページ22)

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雨後ページ22

「わざとでしょ」

呪術高専の地下。
だれも寄りつかないような地下。
その部屋は、男の一声に体感温度が三度は下がった。

「と、おっしゃいますと……」

ベンチに腰掛ける五条。その前に一定の距離を置いて立つ伊地知。
五条はいつもの調子で喋ってはいるが、まとう空気があまりにも重たい。

伊地知は自分の鼓動の音を聞きながら震える声で問い返した。

「特級相手。しかも生死不明の五人救助に一年派遣は有り得ない」

だれかが意図的に彼らにあの任務を与えた。

両面宿儺の器、虎杖Aを殺してしまうために。
ほかの二人が死んでも目の上のたんこぶである五条に嫌がらせができる。

「反吐が出る」

毒々しく吐き出された言葉。
最強から放たれる本当の怒り。

伊地知は震える手で口元を押さえた。

「し、しかし、派遣が決まった時点では、本当に特級になる、とは」
「犯人探しも面倒だ」

頬杖をつき、五条は息を吸った。

「上の連中、全員殺してしまおうか」

それが一番手っ取り早い。

「珍しく感情的だな」

カツン、とヒールの音が部屋に響いた。

白衣をまとった女、家入がくるくると髪の毛をいじりながら現れた。
目の下には濃いクマが染みついており、どこか疲れたような表情だ。

「で、コレが」

金属のベッドにかかった布。

家入はそれを無造作に剥ぎ取った。
中から現れたのは心臓部分にぽっかりと穴を開け、目をつむるA。

せめてもの気遣いとして、下半身に布はかけたままだ。

「好きに解剖(バラ)していいよね？」
「役立てろよ」
「役立てるよ。だれに言ってんの」

家入はAの前に立った。