呪いの王を宿した少女ｰ２ｰ〈呪術廻戦／成り代わり〉 (ページ13)

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なぜ、私をページ13

初めて見る、Aの怒り。
野薔薇は足に根が生えたように動けなくなってしまった。

「ここは少年院だぞ」

しかし恵は間近で圧を受けながらも、まったく表情を動かさなかった。

ただ冷静に、淡々と、己の胸ぐらを掴みあげるAを見下ろした。

「呪術師には現場のあらゆる情報が事前に開示される」

その中には、岡崎正の情報も載っていた。
それを見て、思わず眉をひそめたものだ。顔をしかめた。

「岡崎正(そいつ)は無免許運転で下校中の女児をはねてる。二度目の無免許運転でだ」

Aの目が大きく見開かれた。

突如恵から告げられた情報を飲み込むのに時間がかかっているのか、すぐには返事をしなかった。

「お前は大勢の人間を助け、正しい死に導くことにこだわってるな。だが――」

そうだ。
あたしは、人を助けたい。
呪いに殺される人を少しでも助けたい。
すべての人が、寿命で死ねるように。

だが

「自分が助けた人間が」

私が助けた人間が

「将来人を殺したらどうする」

人を、殺してしまったら。
正しくない死を招く存在になってしまったら。

「……じゃあ、なんで」

ぽつりと小さくAは言う。

あたしだって、人を殺すかもしれない。
両面宿儺を内に宿しているのだ。
いつ、あいつに体を乗っ取られて人々を虐殺してしまうかわからない。

それは、恵にもわかっていたはずだ。

だからこそ、転がりでた言葉。疑問。

「恵はあたしを助けたんだ？」

「いい加減にしろ！！」

落とされた疑問に恵が答えようと口を開いたとき、その空気を裂くように野薔薇の声が響いた。
己を奮い立たせ、野薔薇はずんずんとAと恵に近づく。

「時と場所をわきま――」

目の前から野薔薇が消えた。