呪いの王を宿した少女 ｰ５ｰ〈呪術廻戦／成り代わり〉

恵の姉貴 ページ7

「当たり……っスかね」

難しい顔のまま、Aたちは車まで戻った。

「八十八橋なら俺も行ったことあります」
「バンジーしに？」

茶化すと再び鉄拳が頭に降ってきた。さっきより痛い。

「心霊スポットとかは学校とかと同じで呪いが溜まりやすい。だから高専関係者が定期的に巡回するんだ」

でもちゃんと説明してくれる。

ほへー、とAは新たな仕事内容に口を開ける。
呪術高専って大変なんだなぁ。

「そんときはなんともなかったですね。有名っちゃ有名ですけど普通に使われてる橋ですし」
「でも行ってみるしかないわよね」

何度も橋で人が死んでいたら大騒ぎになるはずだ。
だが、死んだ四人がバンジーをしに行ってからもう何年も経った。そして彼らはいきなり、ほぼ同時に呪いによって死んだ。

なにか、原因があるはずだ。

「伏黒くん」

厳しい顔で考え込みながら、Aは車のドアを開けた。それと同時に武田がやって来た。

呼ばれた恵は振り返る。

「津美紀くんは元気か？」

恵の長いまつ毛が一度上下した。

「はい」

それならよかった、と微笑み武田は恵に背を向ける。
去っていく武田を見ながら、Aは「ツミキってだれ？」となにも考えずに口にした。

「……姉貴」
「はぁ！？ アンタ自分の話しなさすぎじゃない！？」
「恵ってお姉ちゃんいたんだ！？！ なんかずっと一人っ子かと思ってた！！」

キレる野薔薇と驚くA。
いつもの恵ならここでうるさそうな顔の一つでもするのだが、今日はなんだか様子がおかしい。

奇妙なまでの無表情で、なにも言わずに車に乗り込んだのだ。

なにかをこらえるような顔だった。

これ以上人死は出せない→←八十八橋

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す