呪いの王を宿した少女 ｰ５ｰ〈呪術廻戦／成り代わり〉

あべこべ ページ42

「奴の術式はたぶん、あべこべだ」

大量の兎により、男から距離をとる。
パッとフードから手を離した恵は、じっと男のいたほうを見ながら言った。

「どういうこと？」
「虎杖よりタイミングを外された俺の打撃が効いていた。攻撃用じゃない脱兎もだ」

Aの脳裏に男に当たった脱兎がよぎった。
たしかに当たった場所が切れていた。

「脱兎に囲まれた今もすぐに出ようとしない。地面に叩きつけられてピンピンしてんのもそういうことなんだと思う」
「じゃあデコピンで倒せる？」

ゲームセンターのデコピンゲームが得意なAは指を動かす。
しかし恵は首を横に振った。

「弱すぎはダメだ。ただのあべこべなら発動後に空気抵抗とかの微弱な力で自滅するはず。そうじゃねぇってことはあべこべにできる上限と下限がある」

そうなると、攻撃に合わせてあべこべを使い分けているのだろう。
だからこそ規格外の五条には勝てない。その上複雑な術式とも相性が悪い。

と、なると……

「同時、だね」

強い力とほどほどの力で同時に叩く。そうすればあべこべの使い分けはできないはずだ。

「あぁ。だが術式に気づいたとこを悟られたくない。俺たちはこのまま全力で馬力をアピールする。……いいな？」
「もちろん！ さすが恵だね」

A一人ではそんな術式思いつきもしなかっただろう。

ニッと笑うと、恵は目を逸らした。
耳が赤い。

「と、とにかく、俺が脱兎を解いて満象で潰す。その間にお前もなにか力を証明できる攻撃をしろ」
「ふむふむ」
「十分に馬力をアピールしたあと、攻撃力の低い蝦蟇でいく。それが始まりの合図だ」

Aは息を吐き、袖をまくった。

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