呪いの王を宿した少女 ｰ５ｰ〈呪術廻戦／成り代わり〉

作戦開始 ページ39

呪詛師拘束用のワイヤーをAの手首と恵の出した鵺の足にくくる。

セルリアンタワーの屋上へ最も早く行くには鵺に乗って行くしかない。
鵺は興味津々といった様子でワイヤーがくくりつけられるのを見つめていた。

「大丈夫？ 痛くない？」

Aが聞くと、鵺は優しく鳴き返してくれた。

「よし。……準備できた」

驚異的な身体能力を持つAが鵺と共に呪詛師の拘束を行う。
どれだけの人数がいるかわからないが、複数いた場合は猪野が屋上に残って戦う手筈だ。

Aと猪野は鵺に乗った。

「飛べ、鵺！」

地上で待機する恵が一声言うと、鵺はたちまち夜空に飛び上がった。

一瞬で二人と一匹は屋上へ辿りついた。
目視で確認できた呪詛師の数は三人。

Aたちの姿を見た瞬間、三人のうち二人が咄嗟に動いた。

「行くぜ！」
「はい！！」

鵺から飛び降りたAと猪野。

屋上の隅に刺さっていた帳の基を発見した猪野はそれを破壊した。しかし、破壊したのは一本のみ。見る限り、それはあと二本あるらしかった。

残りの二本。
Aは一人の男が握っているのを見つけた。

「鵺！」

弛んだワイヤー。円を描く。
その中心に、男がいた。

腕を引き、ワイヤーを締める。上手く男に絡まった。
そのまま、Aは屋上から飛んだ。

「恵！ 鵺を解いて！！」

ビルのガラス窓が目に入った。
Aは叫び、手首のワイヤーを切り、大きく足を振って身を丸めた。

ガシャンッ！ と派手な音がして、Aは窓からビルの中へ飛び込んだ。
あとはここから下へ降りて行き、恵と合流する。

いくら呪詛師でもあの高さから落ちたら死ぬはずだ。それを願うのみだ。

Aは制服を整え、階段へ向かった。

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