呪いの王を宿した少女 ｰ５ｰ〈呪術廻戦／成り代わり〉

［目標］五条悟の奪還 ページ34

三人が一斉に線路の奥を見つめる。
今から向かう予定のほうから強烈な呪力を感じた。

「一……二、二人かな。虎杖さん、コイツらと君がさっき戦った呪霊。どっちが強い？」

Aはわずかの時間思考し、答えた。

「たぶん、さっきのバッタより強い」

Aが祓った呪霊は人語を操っていた。どれだけ少なく見積もっても準一級以上だ。

「……呪詛師は無視して先に進もう。まずは五条くんの安否確認だ」
［駄目ダ！］

スマホを取り出し、言い切った冥冥に、メカ丸が叫ぶ。

［もう渋谷の状況は変わっていル。相手の結界術はコチラの数段上だ］

今、渋谷には四枚の帳が降りている。

一般人を閉じ込める帳。
五条悟を閉じ込める帳。
術師を入れない帳。

「この線路の先も術師を入れない帳で塞がれていると？」
［そうダ。すでに待機していた術師たちは帳の中だろウ。帳の内側では携帯は使えなイ］

スマホを耳から離した冥冥は苦笑しながら、それを振って見せた。

「それだけじゃないみたいだ。帳外にいるはずの補助監督とも繋がらない」
［頼む。俺の指示に従ってくレ。俺のこの保険もすぐ消えてしまウ］

必死に頼むメカ丸に少しだけ同情が湧く。

Aは冥冥を見上げた。

「……わかった。言ってごらん」

ゆっくりと冥冥が頷いた。

［虎杖は明治神宮前に戻り、地上から渋谷に向かってくレ。五条封印を術師全体に伝達。五条奪還をコチラの共通目的に据えロ］
「おう！」
［冥冥は虎杖が抜ける隙を作ってくレ。呪詛師撃退後はとりあえずこの線路を抑えておいてほしい。だがまだ相手の出方がわからン］
「ところで君の口座はまだ凍結されてないね？」

五条悟が消えれば呪術界も人間社会もひっくり返る。
ここからはさらに力を入れなければならない。命を懸けてでも、五条を取り戻す。

Aは顎を引き、線路奥の暗闇を見つめた。

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