手は汚れていく一方 ページ24
「虎杖に共振の話はするな」
高専のグラウンドの水飲み場。
そこにもたれかかる二つの人影。
野薔薇は恵から聞かされた話に顔をしかめた。
「それ、確定なの?」
「ほぼな」
八十八橋の呪いが今になって突然動き出した。
このこととAが宿儺の指を飲み込んだことは関係している。それは恵も考えればすぐに出てきたことだった。
「虎杖……宿儺の受肉はきっかけに過ぎない。八十八橋の呪殺はいつ始まってもおかしくなかった。そもそも指を飲み込んだのは俺を助けるためだ。でも……あいつはそれで納得しねぇだろ」
決して彼女は納得しない。
その説明で「ならあたしは彼らの死に対して責任を感じなくていいのね」となるような人間でないことは野薔薇も恵もよくわかっていた。
三人殺した、と呟いたAの横顔が過ぎる。
「だから、言うな」
言えるわけないだろう。そんなこと。
「言わねぇよ。レディの気遣いナメんな」
夕日が斜めに差し込む廊下。
そこを歩く一人の人影。
「オマエのせいだ」
Aの頬に宿儺の口が現れ、嘲笑する。
「オマエが俺を取り込んだ。目覚めたんだよ、切り分けた俺の魂たちが」
それを聞きながら、Aは無表情のまま歩き続ける。
「大勢の人を助けるか。ケヒヒッヒヒッ」
宿儺に言われずとも、Aは理解していた。してしまった。
「小娘! オマエがいるから! 人が死ぬんだよ!!」
「ねぇ」
これからもっとたくさん人が死んでいくだろう。
Aのせいで、Aが生きているせいで。
「それ、恵に言うなよ」
だから、言ってはならない。
「言うなよ」
自分の命を救ってくれた恵がそれを知ったら、きっと、彼は後悔する。
Aを助けたことを。Aが生きていることを。
「…………あと、」
宿儺が頬から消える。
「あと何人、」
歩きながら少女は涙をこぼした。
「あと何人、殺せばいいの……?」
窓から差し込む西日が一層強くなり、目を閉じる。
足がついに止まって、少女はその場にうずくまった。
ジリジリと、うなじが灼かれる。
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RENKA - ついに五条先生が封印されちまった…夢主ちゃん達頑張れ! (2021年10月31日 0時) (レス) @page33 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - さーまさん» さーまさん、コメントありがとうございます!呪いの王は渋谷事変で完結を予定しています!それまで更新が不定期になりますが、どうぞよろしくお願いします!夢主ちゃん!がんばれー!! (2021年10月6日 17時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
さーま(プロフ) - ああついに渋谷事変突入...夢主ちゃん(泣) メンタル持つか心配ですが更新楽しみにしております!! (2021年10月6日 15時) (レス) @page27 id: b41a80569b (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - RENKAさん» RENKAさん、コメントありがとうございます!ようやく続編に行けました……!これからも不定期ですが更新していくのでどうぞよろしくお願いします! (2021年8月21日 11時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 続編おめでとうございます!いつも楽しく見させて頂いております、自分のペースで無理せず頑張って下さい応援してます♪ (2021年8月20日 12時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2021年8月15日 0時