飛べない鳥は空を描くｰ３ｰ〈ヒロアカ〉 (ページ42)

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頭が痛いページ42

「わーれわーれ、天下のヴィーラン連合！敵も味方も吹っ飛ばしー、いくぜ！作るぜ！住みやすい世ーのなーかをー」
「音痴のくせに歌うな、不快だ」
「えー、そう？おじさんは聴き惚れちゃったな」
「それ、2番はないのか」

わたしたちは今、高速道路をトラックで走っています！
もちろんみんな運転免許なんて持ってるわけないからゲームが得意なスピナーさんに運転は任せてるよ！

あのあとアジトに戻った直後、ヒミコちゃんから電話がかかってきた。

オーバーホールが緑谷くんとの戦闘に負け、ヴィラン病院へ送られる、と。

「わたし弔の隣に座りたい！コンプレスさん、よろしく！！」

荷台に荼毘さん、コンプレスさんと並んで乗っていたわたしは声を上げた。
ここもドアが開け放たれていて風が気持ちいいけど、屋根に登ったらもっと気持ちいいと思うの。

「あんなに綺麗な歌声を聴かせてくれたんだ。これくらいはお安い御用さ」

コンプレスさんの手がわたしに触れ、一瞬窮屈を味わったあと、わたしはトラックの荷台の屋根に座っていた。
隣では弔がコートを風にはためかせながら立っていた。

わたしを見下ろしていた弔の目がふと前を向く。
それを追ってみると、そこにはパトカーに護衛されている巨大な護送車があった。
ちょうど同じ車線だ。

「運転頼むぜ、スピナー」
「さて」

開幕一発、荼毘さんの蒼炎がパトカーを飲み込んだ。

「なんだ、あいつ」

訝しげに荼毘さんが呟く。
あの火力の蒼炎に包まれて灰にならないものなどないのに。

パトカーは砂に包まれながら炎の中から姿を現した。

「ヴィラン連合！社会にあだなす悪鬼の徒！」
「ヒーロー！」

見たことはないがきっと体を砂に変化させる個性のヒーローが乗っていたらしい。
タイミングが悪い。

「スピナー、減速！！」

弔の指示にスピナーさんがブレーキを踏む。グッとパトカーとの距離が近づいた。

さぁ、あとは弔とコンプレスさんに任せちゃおう。

なにもかもを壊せる弔。
なにもかもを燃やし尽くす荼毘さん。
なにもかもを手中に収めるコンプレスさん。

この三人が揃えば大体のヒーローは怖くない。

今日は人の記憶を覗いた。
悲しみや恐怖が濃い記憶ほどわたしにかかる負担は大きい。

特に今日のイレイザーの記憶なんて、とんでもない負の記憶だった。

頭が痛い。

揺れる車の上で少し目を瞑った。再び瞼を持ち上げたとき、すでに戦いの決着はついていた。