飛べない鳥は空を描くｰ３ｰ〈ヒロアカ〉 (ページ25)

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エンターテイナーページ25

「ん？」

コンプレスさんのポケットを探る手が止まった。

「二人とも、逃げるぞ！！」

次に聞こえたのは六本腕の少年の叫びだった。
その声は自信と安堵に満ちている。

「今の行為ではっきりした。個性はわからんが、さっきお前が散々見せびらかした右ポケットに入っていたこれが常闇と爆豪だな！エンターテイナー」

彼の手の一つにたしかに二つのビー玉サイズのものが握られていた。

「障子くん！」
「なにしてるんですか、コンプレスさん！！あぁ、もう！」

個性を使い、少年の動きを止めようと息を吸ったわたしを止めるようにコンプレスさんは腕を上げた。

ここで取り返さないとこの作戦は失敗に終わってしまう。それだけは絶対に嫌なのに！

「まぁ、待ってよ」

駆け出そうとした荼毘さんは訝しげにコンプレスさんを見る。
仮面で顔は見えないが、なんとなく薄く笑っているような気がした。

緑谷くんたちは一斉に走り出す。意気揚々と。嬉しそうに。
次の瞬間、彼らの前に黒さんのワープゲートが出現した。

「合図から五分経ちました。行きますよ、みなさん」

それぞれの前にワープが用意される。

だが荼毘さんとわたしはそれに入らなかった。
奪われたものをまだ回収できていないからだ。

「待て。まだ目標が……」
「ああ、アレはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんでプレゼントしよう」

コンプレスさんはシルクハットを脱ぎ、仮面に触れた。

「悪い癖だよ。マジックの基本でね。モノを見せびらかすときってのは」

仮面が外れ、覆面が現れた。

「見せたくないモノ(トリック)があるときだぜ？」

んべ、と突き出された舌も上に二つのビー玉が乗っていた。

あれが本物。じゃあ、六本腕の少年が持っているのは……。

バチンッと音がして、少年の持っていたビー玉が弾けた。
中から飛び出したのは紅白頭が出していた氷の山。

「氷結攻撃の際にダミーを用意し、右ポケットに入れておいた。右手に持ってたモンが右ポケットに入ってんの発見したらそりゃあー嬉しくて走り出すよ」
「すごいです！コンピレスさん！ただのマジシャンおじさんじゃないんですね！」
「Aちゃんは今まで俺のことどう思ってたの……？」

これでやっと帰れる。

わたしは伸びをしながらワープへ足を踏み込んだ。

「そんじゃ、お後がよろしいようで」

瞬間、眩いレーザーがコンプレスさんの仮面を吹き飛ばした。