突っ走ろうと思えた ページ24
ごくんっ、と目の前で宿儺の指が飲み込まれる。
十分の一。
さぁ、どうなる?
Aの顔全体にあの模様が浮かび上がる。
形容し難い圧がAを包み込む。
見開いた目の瞳孔は開き、居心地が悪そうに首が動いた。
「クッ、ククッ」
食いしばった歯の隙間から笑い声が捻り出された。
「おえっ、まっっっず」
なにがあってもいいように臨戦態勢をとっていた五条は、げほごほと咳き込むAに歯を見せて笑った。体の内側から湧く高揚感。
肉体の耐性だけでなく、宿儺相手に難なく自我を保つことのできる人間が目の前にいる。
千年生まれてこなかった逸材だ。
「どったの?」
「いや、なんでもない」
笑いを噛み殺すような表情の五条にAは首を傾げる。
「覚悟はできた。ってことでいいのかな?」
Aはぴょんっとベンチから立ち上がり、ポケットに両手を突っ込んだ。
口を曲げ、しばらく黙っていたが、やがてAは肩をすくめた。
「全然。なんであたしが死刑なんだって思ってるよ」
それが最善なのだと理解はしている。しかし、納得はしていない。
「でも、呪いは放っとけない」
放っておいてはいけない。
唯一の肉親が最期に言い残した遺言はAの心に深く沈み込み、Aの前に道を作った。
そして、それと同時に「人を救わなければならない」という鎖をAの体に巻きつけた。
だが、それはそれでいいと思った。
「宿儺は全部喰べる。あとは知らない」
親孝行らしいこともしなかった。言うことを聞いてこなかった。反抗ばかりしていた。
ならせめて、死に方くらいは従ってやろうと思った。
彼の示した最期まで突っ走ろうと思えた。
「自分の死に様は、もう決まってんだよ」
大勢に囲まれて死ぬ。
それが自分の死に方だ。
「楽しい地獄になりそうだ。今日中に荷物まとめておいで」
よいしょ、と立ち上がった五条にAは再び首をひねった。
「どっか行くの?」
「東京」
背後から聞こえた抑揚のない声に振り返ると、そこには見るからに無事ではない伏黒が立っていた。
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森 - なんだこれぇ…おもろいやん…惚れてまう… (2022年2月1日 23時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - テイルさん» テイルさん、コメントありがとうございます!ご指摘の通り、悠仁の漢字を間違えていました汗 急いで訂正致しました。おもしろいと言っていただき嬉しいです!これからも更新頑張ります! (2020年11月30日 0時) (レス) id: 4990928c1f (このIDを非表示/違反報告)
テイル - 面白いです!!私はこう言うの読みたかった!! 頑張って下さい!! ところでどうでもいいんですけど ユウジって悠仁じゃありませんか? 悠二じゃないような…? (2020年11月30日 0時) (レス) id: 76f38bdf79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2020年11月28日 19時