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54.独りよがり ページ4

まんまと策略に乗らされたことにも気が付かず、私はやり返してやる、と意気込んで彼の目をムッと見る。




「わ、私だってあるよ!言いたいこと!」


「……いいよ、言って。」




そう言う花沢くんはやっぱり余裕そうで、
なんだか悔しくなる。

私だって花沢くんが困るような、恥ずかしくなる
ようなことを言ってやりたい。





「その、は、花沢くんはモテすぎだと思う。
そんなにカッコイイのに、もっと気をつける
べきだと思う……!」


「……うーんと?」


「もう変装して外出たほうがいいと思う……。
あんまりその顔で外に出ない方がいいと思う。」


「あれ。僕悪口言われてる?」





あれ、と言いたいのは私もだ。

こんなことを言うはずではない。もっと
ビシッとしていて、それでいて本当に困る
ような文句があるはず……。



……なんていうのは本当に言い訳以外の何物
でもなくて、核心を突くのが怖いだけ。

私が本当に言いたいことは、そんなのは
すでに、もう。





「……それから、私の他に好きな女の子が
出来たとしても、………。」


「そんなのある訳ない。A……?」




わ、あ、駄目だ。


……泣く。




「……やだ、っはなざわくん、きらい……。」


「どうして。A?」




ほら、またこうなってしまうのだ。


こんな時私は本当に自分が嫌になる。

もっととことん相手にきつく当たれるような
性格だったなら。格好良く問いただせるような
凛とした人だったなら。


どれほどよかったんだろう。




「だ、って、見ちゃったのに。」


「見たって……何をだい?」





花沢くんは私の手を優しく握って
ゆっくり話を聞いてくれる。


全部、全部溢れだす。

今まで言えなかったこと。





「女の子と、歩いてたの、花沢くんが……。
見たの。駅で、一緒に、歩いてるの、」


「……それはいつの話?」


「わかんな、い。でも、喧嘩する前、
……最寄り駅の、となりの、……。」


「……。」




少し考え込むようにうつむく花沢くん。
でも、私の口は止まらなくて。




「それに、ほんと、は、……ずっと昨日みたいに
したかった、……ずっと、昨日、みたいに。」


「昨日?」


「きの、う……。こ、やって、ぎゅって……。
……でも花沢くん、だめって……。大人になって
から、って。今はだめって。」


「A……。」


「……私ばっかり、好きみたい。」



そう。私ばっかりって思ったの。

ただの私の独りよがり。

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五月七日(プロフ) - 凄く面白いです大好きです!応援します!! (2019年3月26日 19時) (レス) id: 05191dc1a4 (このIDを非表示/違反報告)
Mi - とっても面白い作品でこっちもドキドキしました!!有り難うございました! (2019年3月25日 20時) (レス) id: 8c9f90ef49 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2019年3月24日 16時

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