検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:48,205 hit

#4 ページ33

A side.


須貝さんの姿はなかったのだ。


ふくらさんに聞くと、もうすぐ来るらしいけど、私にとって、喜ばしいことではなかった。


本当は、喜ばしいのだけれどもそうはいかなかった。



__ なんで、恋しちゃったんだろ。



こんなことになるんだったら、あの時に勢い任せで、「 好きです 」って言うべきだったと後悔。


「 おにい 」とか、「 お兄ちゃん 」とか。


そんな関係でいたいと、願った事は一度もないのに。


現実って、そう上手くはいかない。


おそらく最後に喋ったあの日に、隣から感じた温もりと、須貝さんの表情を思い浮かべる。


目頭が熱くなって、思わず下を向く。


もうさんざん泣いたはずなのに。


…もう、この感情は忘れたはずなのに。


どうして。



「 え、Aちゃん!? 」



__ 「 忘れるな 」と、拒否反応が出るのだろうか。



突然泣き始める私を見て、みんなはオロオロし始め、山本さんは、背中を摩ってくれた。


必死で拭っても、止めどなく溢れる涙は、何も教えてくれない。


ただただ、寂しくて、悲しくて、謝りたくて。


……須貝さんに、会いたくて。


その時、開いたオフィスの扉。


嗚咽をしながら、泣き続ける私を見て、開口一番に発した言葉。



「 ……Aちゃん、? 」


「 …あ、須貝さん。やっときた 」



山本さんは、私の背中を擦りながら、視線の先の須貝さんにこう言った。



「 ……僕は分からないですけど、須貝さんなら、分かるんじゃないですかね? 」


「 …俺なら? 」



背中を摩る手を止め、山本さんはどこかへ行って行ってしまった。


他のメンバーもいつの間にかいなくなっていて。


須貝さんと、ふたりきり。


無言で、私の横に座った須貝さんは、ゆっくりと口を開いた。



#5→←#3



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (36 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
153人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

もちもちこねこ(プロフ) - fkrさんのお話をもっと読みたいです! (2020年7月8日 14時) (レス) id: 1da52e5d4f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ドルフィン | 作成日時:2020年2月18日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。