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A side.
須貝さんの姿はなかったのだ。
ふくらさんに聞くと、もうすぐ来るらしいけど、私にとって、喜ばしいことではなかった。
本当は、喜ばしいのだけれどもそうはいかなかった。
__ なんで、恋しちゃったんだろ。
こんなことになるんだったら、あの時に勢い任せで、「 好きです 」って言うべきだったと後悔。
「 おにい 」とか、「 お兄ちゃん 」とか。
そんな関係でいたいと、願った事は一度もないのに。
現実って、そう上手くはいかない。
おそらく最後に喋ったあの日に、隣から感じた温もりと、須貝さんの表情を思い浮かべる。
目頭が熱くなって、思わず下を向く。
もうさんざん泣いたはずなのに。
…もう、この感情は忘れたはずなのに。
どうして。
「 え、Aちゃん!? 」
__ 「 忘れるな 」と、拒否反応が出るのだろうか。
突然泣き始める私を見て、みんなはオロオロし始め、山本さんは、背中を摩ってくれた。
必死で拭っても、止めどなく溢れる涙は、何も教えてくれない。
ただただ、寂しくて、悲しくて、謝りたくて。
……須貝さんに、会いたくて。
その時、開いたオフィスの扉。
嗚咽をしながら、泣き続ける私を見て、開口一番に発した言葉。
「 ……Aちゃん、? 」
「 …あ、須貝さん。やっときた 」
山本さんは、私の背中を擦りながら、視線の先の須貝さんにこう言った。
「 ……僕は分からないですけど、須貝さんなら、分かるんじゃないですかね? 」
「 …俺なら? 」
背中を摩る手を止め、山本さんはどこかへ行って行ってしまった。
他のメンバーもいつの間にかいなくなっていて。
須貝さんと、ふたりきり。
無言で、私の横に座った須貝さんは、ゆっくりと口を開いた。
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もちもちこねこ(プロフ) - fkrさんのお話をもっと読みたいです! (2020年7月8日 14時) (レス) id: 1da52e5d4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドルフィン | 作成日時:2020年2月18日 18時