#3 ページ32
A side.
このまま気にせずに、仕事に集中出来たらいいのだが、好きな人がすぐ隣にいるという状況に心臓はバックバク。
「 …A、 」
『 …な、なんでしょうか 』
突然呼ばれた名前に、顔が火照っていく。
なんとかバレないように、返事をする。
それが気に障ったのか、かなり長いため息をついた須貝さん。
「 …俺のこと、嫌いなの？ 」
『 ……え 』
まさか、須貝さんからこんなことを言われる日が来るとは思わなかった。
私から目線を外した須貝さんは、それから口を開くことはなかった。
寝耳に水。
否定も肯定も、することが出来ない自分は、ただただパソコンと向き合うことしか出来なかった。
気づけば、隣からいなくなってて、別の部屋にいたふくらさんに聞くと、もうとっくに帰ったらしい。
夜も遅くない帰り道も、どこか寂しくて。
私のところだけ、冷たい風が吹いているようだった。
リビングのソファーに寝転がり、今日の出来事を振り返る。
『 ……どうしたらいいのかな 』
目を瞑り、零れてくる涙を止める方法を教えてほしい、と願った夕方だった。
それから、なんにもない日常が一日、二日と過ぎていき、あっという間に3月の後半。
おにいと、最後に喋ったのはいつだっけな。
大学の卒論で1ヶ月くらいオフィスに行っていなかった。
そして大学を卒業した、今日。
卒業報告にと、久しぶりにオフィスに足を運んだ。
「 おお、Aちゃん！ 卒業おめでとう！ 」
「 あのAちゃんも卒業かあ…… 」
「 いやあ、大きくなったね〜 」
「 子供が大人になって巣立ってく様子ってこんな感じなんだね 」
「 もう親目線だね。俺もだけど 」
『 みなさん、ありがとうございます 』
保護者同然の伊沢さんとふくらさんは、大学1年の頃から社会人として育ててくれて。
山本さんもこうちゃんさんも、お祝いしてくれた。
でも卒業して、祝ってもらえて、心は満足しているはずなのに、どこか喜べなくて。
ああ、そっか。
＿＿ 一番最初に、大好きな笑顔が「 おめでとう 」と言ってくれなかったからだ。
→
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もちもちこねこ(プロフ) - fkrさんのお話をもっと読みたいです！ (2020年7月8日 14時) (
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作者名：ドルフィン | 作成日時：2020年2月18日 18時
