SS エゴと愛と充電器 izw ページ14
A side.
『 …拓司くん、まだ起きてたの? 』
「 ああ、ごめん。起こした? 」
『 ううん、目が覚めちゃって 』
彼は一体、いつ寝ているんだろうか。
朝から夜まで動きまくって、テレビ出て、動画出演して、家帰ってきて、休むことなく次の仕事の準備。
あんたはマグロか。止まったらタヒぬんか。とツッコミたくなるけど、働き続けることが、彼なりのエゴらしい。
従順承知の上で付き合っているのだが、さすがに心配になる。
目が覚めたついでに、彼にコーヒーを淹れる。
置かれたカップに気づいた彼は、「 ありがとう 」と微笑んだ。
『 …少しぐらい休んだら? いくらなんでも壊れちゃうよ 』
「 大丈夫大丈夫、あと少しで終わるから 」
『 …もう、せっかく心配してるのに 』
「 すぐ終わるから、Aはもう寝な? 明日も早いんでしょ? 」
『 そうだけど… 』
「 おやすみ 」
『 …おやすみなさい 』
拓司くん、さすがに寂しくなるよ。
ただでさえ、ここ1週間出張やら、YouTubeやらでふたりの時間を過ごせていないのに。
今もなおパソコンに向かい続ける後ろ姿に、ため息をついて、もう一度寝室に向かおうとした時だった。
「 …あ、そうだ 」
『 ……どうしたの? 』
「 こっちきて 」
自分の隣をポンポンする拓司くん。
そこに座れという彼の合図だろう。
すでに寝室に向いていた足を戻して、隣に座ろうとした時。
『 ちょ、拓司くん…? 』
「 …ん、じゅうでん 」
座るなりすぐに腰に手が回って、私の肩に顔を埋める拓司くん。
くすぐったいけど、嬉しい。
「 …A、ごめんな 」
『 …え、どうしたの急に 』
「 おれ、Aのこといつも放ったらかしでさ。もうしわけないって思ってる 」
『 …そんなの仕方ないでしょ? お仕事なんだから 』
「 そうだけど… 」
『 拓司くんのお仕事してる姿が大好きだから、これからも無理しないで働いてね 』
「 ……ずるいなぁ、Aは 」
肩を頭でぐりぐりするのは、彼の照れ隠し。
頭を撫でたら、「 子供扱いするな 」と子どものように拗ねるけど、私はその顔が大好き。
『 拓司くん、お仕事頑張ってね 』
「 …うん、頑張る 」
またパソコンに向かった拓司くんの背中におやすみと呟いたら、「 A、好きだよ。おやすみ 」と不意打ちをつかれた。
寝る間際にそんなこと言わないでもらいたい。
…恥ずかしくて寝れませんから。
.
153人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちもちこねこ(プロフ) - fkrさんのお話をもっと読みたいです! (2020年7月8日 14時) (レス) id: 1da52e5d4f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ドルフィン | 作成日時:2020年2月18日 18時