ある日のSerenade izw ページ12
Izw side.
俺にすればいいのに。
何度この言葉を繰り返しては、口から出てしまわないように飲み込む。
そんな俺とAの非日常。
突然訪ねてきては、彼氏の愚痴ばかりを聞かされる。
……俺の気も知らないで。
『 浮気までされて、ほんとよく私たちって別れないなって思う 』
「 …それは俺のセリフだよ 」
『 拓司はさ、恋人作らないの? 』
「 …はあ? 」
そうやっていつも聞いてくるけど、お前だよ、って言えないのは俺の情けだ。
だからせめてこの時間だけでも、許してほしい。
コップを置いたのを見計らって、彼女の肩を押した。
『 ちょっ、たく、し……っ 』
「 うるさい、黙って 」
彼女が嫌がることぐらい分かってるさ。
無理やりキスをしてしまえば、彼女はきっと、何も言えなくなる。
否、言わせない。そんなこと。
彼氏がいるからなんて、聞きたくない。
『 んっ、、たくしっ…… 』
「 ……俺にしろよっ、 」
『 た、くし……? 』
「 …俺なら浮気なんて絶対しないし、ずっとAの隣にいるし、キスでもなんでもするから…っ 」
" お願いだから、離れないで "
ずっと言いたかった言葉は、彼女の涙とともに流れ落ちた。
『 ……っ 』
「 …ごめん、泣かせるつもりじゃ… 」
『 ……ごめん、なさいっ、 』
「 A…… 」
『 …気づいてたっ、 』
彼女の涙にハッと我に帰った時には、もう遅かった。
こぼれ落ちた一粒を親指で掬って、起き上がらせる。
『 ……拓司が私を好きだって、分かってた 』
「 …え、 」
『 気づいてたのに、知らないふりしてた… 』
ごめんと、嗚咽をあげながら泣き続ける彼女を、ひたすら見ていることしか出来なかった。
気づいてたらなんで、なんて。
また、言葉を飲み込んだ。
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もちもちこねこ(プロフ) - fkrさんのお話をもっと読みたいです! (2020年7月8日 14時) (レス) id: 1da52e5d4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドルフィン | 作成日時:2020年2月18日 18時