113.格好 ページ25
髪の毛が、顔が、制服が、雨に濡れる。
カルナイに貰ったカチューシャとかは、呼び出された時に何かあっては困るので、置いてきていた。
それは正解だったと、安心する。
『…取らないで』
彼女の声が頭に響く。
私は神宮寺さんを取ってないし、奪ってもいない。
私は…何もしてない。
ただ、話していただけ。
強いていうなら、朝ごはんを1度作ったことくらい。
「どうしたものか…」
突然シカトするのはおかしい。
私は今更、女子を敵に回すことは怖くない。
学校内での小さな嫉妬なんて、可愛いものだ。
ああいう面倒ごとは避けたいけど。
「………」
校舎裏から湖の近くまで来た。
皆は授業だから、生徒先生共に誰にも会っていない。
だから、油断していた。
ただ1人、授業を受けることが出来ない時間が存在している人が、この学園にいたことを。
「……月夜、さん?」
傘をさして立っている男の人。
声と呼び方から、それが一ノ瀬トキヤだと分かる。
「…一ノ瀬、さん」
「何してるんですか!?
そんなびしょ濡れで!!」
「雨を感じてます」←
「アホなこと言わないで下さい」←
そう言いながら、彼は私を傘に入れてくれた。
「……とりあえず、こっちに」
「?」
一ノ瀬さんは少し早足で、屋根があって座れる所に移動した。
それに私も慌てて付いて行く。
「…これを使って下さい」
「…タオル?」
一ノ瀬さんが持っていた鞄から、やけにデカイタオルが出てきた。
くそ、洗剤のいい匂いがしやがる←
「何故?」
「そのままだと風邪をひくでしょう!
それに、その格好…っ…」
「格好?
…………あ」
格好。
そうだ。
私、制服濡れてるわ。
下着透けてるパティーンだわ。
「…では、遠慮なく」
モソモソとタオルで体を拭いて、髪の毛も拭く。
「…体、冷えてませんか?」
「いえ、別に…―っくしゅん!」
「もう少し、ちゃんと使って下さい」
頭の上にかけていたタオルをそっと取ると、一ノ瀬さんは漫画みたいに、タオル全体で私の体を包んだ。
「…温かいです」
「…っ…少し、ここで待っていて下さい」
そう言って、一ノ瀬さんは立ち上がった。
スタスタと何処かに歩いて行く。
「…?」
「(何なんですか、あの人…。
ただでさえ、容姿が整って綺麗なのに。
雨に濡れて余計に…、色気が…)」
「(それに、どこかいつもより雰囲気が柔らかかったような…。
こんな雨の中、本当に何をしていたんでしょうか)」
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恭(プロフ) - はじめまして、ノルノネの方もこちらの方も楽しく読ませていただいてます。更新を再開していただけたら幸いです。 (2017年11月7日 16時) (レス) id: 6cce78c8ac (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ねぎさん» ノルノネの作品も読んでいて下さるんですか!?ありがとうございます!!テスト週間に入ってしまい、そちらに専念するのでしばらく更新が出来ません。大変申し訳ございません。終わり次第、また更新します!! (2017年2月22日 7時) (レス) id: d612dec37b (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ - ノルンノネットの作品もこのうたプリの作品もとっても読んでいてワクワクする小説で私のお気に入りです。更新が止まってしまっていますがまた更新してくれることを楽しみに待っていますね!!頑張ってください。 (2017年2月21日 3時) (レス) id: 4d5fa3e4b6 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 藍音さん» ありがとうございます!!更新が遅くなっていて申し訳ないです。頑張って更新できるようにします! (2016年12月19日 16時) (レス) id: d612dec37b (このIDを非表示/違反報告)
藍音(プロフ) - 凄く楽しんで読んでます。これからも更新頑張ってください! (2016年12月17日 20時) (レス) id: 1412c3226a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のん | 作成日時:2016年5月22日 13時