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こういう時、足が速い方で良かったとつくづく思う。
あっという間に体育館が見えてきて、少しスピードを落とした。
うるさく鳴っている心臓は、走ったせいなのか、緊張しているせいなのか。
なんであれ、今なら何でも言える気がしていた。
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「 …っ、大我！！ 」
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このまま勢いで言ってしまおう、そう思って見下ろした階段に、彼の姿はなくて。
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「 え… 」
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肩で呼吸をしながら、頭の中を不安が埋めつくしていく。
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( 待って、もしかして、帰った…？ )
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いやまさか。大我は連絡も無しにそんなことしない、と思う。
一旦落ち着こうと、いつも通り階段に腰を下ろした。
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「 もう…なんでいないの、 」
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出鼻をくじかれた気分。
さっきまでの勢いは萎んで、また少し緊張が顔を出す。
はぁ、と溜息を一つ零した後、階段下のゴミ箱に目が行った。
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( 大我と初めて会って話したのも、ここだったな )
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スンと澄ました表情、温度を持たない声のトーン。
交わした言葉をひとつひとつ、なぞるように思い出して、不意に、潰した紙パックを何気なく投げ入れた、あの日の大我の横顔が浮かんできた。
あぁ、そういえば。
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「 私もやってみようと思ってたのに、結局やったことなかったなぁ 」
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手にしている、同じ紙パック。
投げやすいサイズにしようと、力を入れて折り畳んで立ち上がった。
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「 もし、これが入ったら、 」
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これが入ったら、告白が上手くいく。
突然そんな謎の願掛けをして、狙いを定める。
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( これが、入ったら＿ )
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勢いよく腕を振って放ったそれは、空中でゆっくりと弧を描いて、
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「 あ… 」
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ガツン、と音を立ててゴミ箱の縁に当たった。
…入らなかった。
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紺(プロフ) - にこさん» 嬉しいです！！ありがとうございます*^^* (2021年8月9日 8時) (
レス) id: 55c78b94af (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 面白かったです！完結おめでとうございます (2021年8月8日 14時) (レス) id: d0206497b3 (このIDを非表示/違反報告)
紺(プロフ) - わたぐもさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けた様で良かったです*^^* わわ、そっちも読んで頂いてるんですね…！更新頑張れます、ありがとうございます！！ (2021年6月25日 12時) (レス) id: 55c78b94af (このIDを非表示/違反報告)
紺(プロフ) - ティーさん» ありがとうございます！！やっと付き合ってくれました！！()いつもコメントくれてマジで支えになってました*^^* 次の時もぜひ！よろしくお願いしますっ！ (2021年6月25日 12時) (レス) id: 55c78b94af (このIDを非表示/違反報告)
わたぐも(プロフ) - このスピードで進んでいくのがとっても好きでした！素敵な時間をありがとうございました！さっくんの方も楽しく読んでます！紺さんのペースでの更新を待ってます！ (2021年6月25日 2時) (レス) id: d1f867438f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺
| 作成日時：2021年5月3日 16時
