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リビングに繋がっている階段を上ると、すぐの所に廊下があった。私の部屋は二階の右手の奥から二番目の部屋らしい。右隣が空室で左隣が96猫さん、正面がEveさんの部屋だ。そしてnqrseさんとSouさんも同じ階にいる。
部屋の中は綺麗だった。オフホワイトの壁に彩度の低いベージュの床で、少し小さな窓には薄いミントのカーテンが取り付けられていた。
「壁や床の色が気に入らなかったらいろいろ弄っていいよ。落ち着いたらネットで家具を買うことになるだろうから、その時にでも注文してね」
Eveさんはリュックサックを丁寧におろしながらそう言った。
「ありがとうございます……荷物まで持たせちゃって」
「いやいや、長旅で疲れただろうし」
Eveさんは1歳年上だ。この家には私と同い年のメンバーがSouさんしかいないらしい。全員が年上だから、私にはタメで話しかけてくれる。それがとても気楽だった。
「クローゼットもコンセントも……部屋の中のものは自由に使っていいからね。一区切りついたらパソコンか何かを持ってリビングに来て。パソコンは持ってきた?」
「はい。充電があるかは分かりませんが、一応」
「よかった」
Eveさんは「またね〜」と微笑みながら部屋を出た。
__ひとりになった。自覚して、急に力が抜けて床に座り込む。緊張して力んでいたからか少し暑い。予想以上に疲れが溜まっていた。バスの中ではまともに眠れず、重い荷物を持って慣れない駅の乗り継ぎをして、やっとのことでこの家に到着した。全員が怖い人だったら、という想像が杞憂に終わってよかった。
これからこの家で過ごすにあたって、変わったものは大きい。でもこれをノリと勢いで決めた以上、深く悩むのは無意味なのかもしれない。
何かモヤモヤは残るが、ひとまず服をクローゼットにつめ、充電器類をコンセントに繋ぎ、一式が届くまでの数日間を凌げる状態を作った。
__ここまで整理した段階で、部屋着がないことに気づいた。数日後に郵送で届くだろうが、数日後に届いたところでそれまで着る部屋着はない。よく考えたら他にも色々なものをダンボールに詰めて来てしまった。後悔先に立たずとは言うものの、流石に困る。
後で1度外へ出てみようか。買い物ついでに散策をして、ある程度の土地勘をつけておきたい。
それよりも先に、リビングで待たせてしまっている皆を慮り、私は部屋を後にした。
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作者名:たなか | 作成日時:2022年11月29日 2時