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｢こむぎさんって出身どこなん？｣
luzさんが何の脈絡もなく聞いてくる＿＿そもそもこの会自体がその文脈なのかもしれないが。
私は、つい昨日までいた地元の名前を言った。
｢へぇ、意外とあっさり言ってくれるんやね。年齢以外の情報が全く明かされてなかったから、基本ガード固いんやと思ってた｣
｢＿まぁ、同業者ならいいかなって｣
｢同業者｣
luzさんは反復して笑った。
確かに情報はあまり出してなかったが、意図的ではなかった。そもそも明かせる情報がなかっただけだ。＿＿地理情報は確かになるべく隠していた節はあったが。
｢というか、よく来たよね。そらるさんからDMが来た時、怪しんだりしなかったの？｣
天月さんがジュースを注ぎながら聞く。
｢アカウントが本物だったので……。確認する数分前に自撮りがあがってたから、乗っ取りではないなって思って｣
｢ちゃんと確認はしたんだ、偉いね｣
｢ほら、そもそも僕らは知り合いで適当に組んだだけだからさ。誰かをいれること自体が初めてだったんだよね｣
Eveさんが麦茶を飲みながらそう言った。
確かに私以外は皆、何かしらの繋がりがある。何故私を誘おうという話になったのか、気になったけど聞く勇気はなかった。
というか、なぜ私はここにいるのだろう。ここにいて良い存在なのだろうか。同じ活動をしているとはいえ、彼らとは人気も知名度も違う。私はただの、彼らのいちリスナーだ。きっとこの件を公表したら批判が集まる。一瞬だけ居づらさを感じた。
｢まあみんな、こむぎが来るのを楽しみにしてたし｣
その居づらさはnqrseさんの言葉で少し軽くなった。
料理もみんなのお腹の容量も段々減っていき、会は終わりを迎える。この一時間弱で随分と慣れたように思う。雲の上の存在に思っていた彼らを、ちゃんと人間として認識できてきた。対等＿とまでは行かなくても、会話に抵抗を感じなくなった。
そらるさんは食器を重ね、立ち上がって言う。
｢楽しみも程々に、こむぎは部屋を作らないといけない。家具はネットか何かで注文するとして、色々届くまでの数日を乗り越えなければならないからな｣
｢みんなで準備しよう｣
天月さんの掛け声に全員が相槌を打ち、お開きとなった。
玄関に放置してしまっていた大きなキャリーケースを立てる。リュックサックを背負おうとすると、Eveさんが代わりに持ってくれた。
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作者名：たなか | 作成日時：2022年11月29日 2時
