【歌い手】シェアハウスさせてもらうことになりましたが、 (ページ29)

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話す内容も尽きてきた頃、配信を終える雰囲気を醸し出しつつ、私は少し伏線を張ってみる。

｢まぁ、なんだろう。ひとつだけ楽しみもできたし、私はそれに向けて努力を積んでいこうと思ってます。｣

『楽しみ？』『何かあるの？』『ライブ？？』

いくつか正解のコメントもあったが、私はそのどれにも触れずに締める。

｢皆も頑張って下さいね。あと気まぐれでいつか歌ってみたも出すかもしれません。楽しみにしててください｣

含みのある言い方をしたからか、配信終了直後のツイートには色々な感情のリプライが届いた。言ってから、果たしてこれは示唆しても良い内容なのだろうかと内心焦ったが、当のまふまふさんが仄めかすツイートをしていたからきっと良いのだろう。

私は私が思っている以上にライブを楽しみにしているのかもしれない。

録音室の電気を消して部屋を後にする。ドアの閉まる音が明瞭に響く。自室に戻ろうとして、向かいの部屋から話し声が聞こえてきた。＿＿Eveさんの部屋だ。
図らずもその会話が耳に入ってきた。

「＿＿だから、こむぎちゃんはなるべく＿＿＿」

「でもそうしたら＿＿」

「なんでそう話をややこしくするんだ＿＿」

声色どころか概要も掴めなかったが、口論だろうか。話が気になって少し立ち止まったが、階段の方から足音がして私はすぐに部屋に入った。

＿そもそも、初ライブの私がこの件の一番の厄介どころなのではなかろうか。私は全てを任せておき、その他のまとめ役が悩んでどうする。私自身もちゃんと意見を出す必要があるのではないか。

またいつもの、思考が枝分かれして混乱する悪い癖が出てしまった。少なくとも私は今ここの部屋にひとりでいるし、私の処遇については丸投げしていることが事実だ。

ならいっそ、ノリで自撮りでもあげようか。お洒落な料理や空模様すらも画像として載せるのは稀な私だ。急に自撮りを晒して不審がられるだらうか。でも、顔出し問題はそれで解決できる＿？

自分でも悪い方へ考えを巡らしているのは自覚していた。でもあまり場数を踏んでいない私には、それくらいしか対処法が思い浮かばなかった。

載せる載せないは別として、白い壁紙を背景に自撮りをしてみる。レンズの歪みで一層可愛くなく映る。顔を傾けてピースで口元を隠して＿＿

何をしているんだろう。

間違いなく滑稽な行動を第三者視点から俯瞰し、私はため息をついた。