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移動時間は長かったのか短かったのか分からない。詳細は聞き漏らさなかった。ただ焦っていた。
家賃や食費などの会計関係は月の初めに回収されること。料理や洗濯などの家事は当番制であること。起床時間や就寝時間は決まっていないこと。それに伴って朝食は各自で済ませること。住民全員が著名な活動者である関係上、情報の漏洩や外出時の身バレへの注意は徹底すること。
事細かに言われたのち、｢まぁ過ごしていたら適応できるだろうから頑張ろうね｣などと労いの言葉をかけられて、シェアハウスへと到着した。
3階建てだろうか＿白を基調としたモダンな家だった。あまり大人数が住める印象は無いが、奥行きがあるのかもしれない。
｢中に入りましょう、皆がこむぎさんと会えるのを楽しみにしてますよ｣
｢えっ…私ごときが｣
｢ごときなんて、そんな｣
対面にまだ覚悟ができていない私をよそに、そらるさんは躊躇なくドアを開けた。
｢ただい｣
そらるさんの声を遮るように、クラッカーが鳴った。
｢初めましてー！！｣
｢ようこそ我がそらる帝国へー！！｣
｢そらる帝国ってなんだよ、あと玄関で騒ぐな、近所迷惑だろ｣
｢ノリ悪いなあ｣
｢いいからまず中入れ、こむぎさんも怖がるだろ｣
突然のノリについていけないまま、流されるように家の中へ入ってしまった。
玄関からは、廊下などは経由せずにすぐにリビングに繋がっていた。部屋の中は飾り付けられていて、机には豪華な料理が並び、何より部屋の中の全員(そらるさんと私を除く)がクラッカーを握りしめていた。
｢じゃあ、改めまして｣
｢ようこそそらる帝国へー！！｣
再度クラッカーが鳴った。
｢そのそらる帝国ってなんだよ｣
｢え、この家の名称ですよ｣
｢頼むからこむぎさんに変な印象を植え付けないでくれ｣
このゴタゴタの中で、誰が誰かは声でなんとなく把握出来た。1度目の、玄関でクラッカーを鳴らした人は、96猫さんとSouさんだろう。そして2度目にクラッカーを鳴らした人は、luzさんとnqrseさんだろう。全員の勢い(そらるさんを除く)に圧倒されて、私は逆に冷静になっている。
｢まぁまず、ようこそ。うるさい家だがこれからよろしくお願いします。｣
｢あ、よろしくお願いします｣
そらるさんはやれやれといった表情を浮かべながら私にそう言った。
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作者名：たなか | 作成日時：2022年11月29日 2時
