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昼食は駅の近くのカレー屋に行った。私は甘口のシーフードカレーを注文した。
帰宅して配信の準備に取り掛かろうとしたとき、私はひとつ気になった。
｢録音ってどこでやるの？｣
この家は広いし部屋数も多いが、防音室がない。それが普通だと思うが、アーティストが住むことを想定していないのだろう。防音が効いてないこの家で録音をしたら迷惑極まりないはずだ。それは配信にも同じことが言える。
96猫さんはショルダーバッグを肩から下ろして言う。
｢録音はね、3階のluz君の隣の部屋でやってるよ。つっきーが一夜漬けで仕立てたんだ｣
実際にその部屋へ行ってみると、壁と床の色が違った。マイク、モニター、アンプなどの機器から、ギター、ベース、キーボードなどの楽器まで各種勢揃いで、録音も配信も出来そうだった。
｢素人が作ったようには思えないよね。ちゃんと防音も完璧なんだ｣
言いながらEveさんは、パソコンやマイクなどの機器をケーブルで繋げてセッティングを始める。
｢楽器も機械も自由に使っていいからね。人数が多い分空いていることはあまりないから、空いていたらすぐ録音できるようにしておいた方がいい｣
午前中に二度寝をして明るさを取り戻したSouさんは、水を飲みながらそう言った。
配信の告知をするためにTwitterを開く。DMや通知の確認で何度か開いてはいたが、発信をするのは久々のように感じる。
『10分後くらいに配信をしますよ〜⸜(*˙꒳˙*)⸝今回は少しレアなメンツでお届けします。楽しみにしててね』
ツイートをした瞬間に配信の時間が前後する可能性を書き忘れてしまったことに気づいたが、いくつかのいいねがついてしまったので消す訳にも行かなかった。代わりに引用リツイートで補足する。
予想より少し早めに準備が終わった。待機コメントが多く流れる中、私たちは配信を始めた。
｢……行ったかな？みんな聞こえてますか？｣
Eveさんが話すと、コメントが急に流れ始める。
｢聞こえてるっぽいね。こんにちは〜Eveです｣
｢こんにちは、Souです〜｣
｢やっほー、96猫だよ｣
＿流れるような自己紹介についていけず、私は思わず勢いで話してしまう。
｢あっ…こむぎです｣
咄嗟とはいえもっと何かなかったのだろうか。挨拶もなしで、淡々と名前だけを言ってしまった。
恐る恐るコメントを見ると、私の枠の何倍もの速さでコメントが流れていた。
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作者名：たなか | 作成日時：2022年11月29日 2時
