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「初めて大寿君が二人に手を上げるのを見た時、やめてって言ったの。それからは私がいる時は、大寿君が暴力振るってる所見た事ないんだ。」
それが彼の優しさなのだと、Aは八戒の頭を撫でる。
「今はまだ殴られる事があるかもしれないけど…それもちょっとずつ、なくせるようにしたいなって思ってる。八戒も、やり返せるぐらい強くなれるといいね。」
Aは笑って、再び歩き始める。
その後ろ姿を目に映しながら八戒は、やはり愛は苦しいものだと考えていた。
_____
中学に上がったある日の朝。
制服姿のAは、柴家のインターホンを押す。
扉が開くと、中からブレザーの制服を来た大寿が出てきた。
「おはよう大寿君、今日もかっこいいね。」
大寿「うるせぇ。」
扉を閉め歩き始めると、Aはピッタリと大寿に寄り添う。
離れろと言わないのは、言っても無駄だという事を彼はわかっているからだ。
歩道のない道に出ると、いつも大寿は道路側を歩く。
本人は無意識なのかもしれないが、Aはそのさり気ない気遣いが嬉しかった。
学校へ着くと、教室の入口で別れる。
クラスが違うのは致し方ない、とAは名残惜しそうに手を振る。
当然ながら大寿が手を振り返す事はなく、仏頂面で自分の教室へと入っていった。
_つまらない。
そう思いながら、Aは窓の外を眺める。
彼女の手元にある教科書は開かれ、所々にメモが書いてあった。
授業中にも関わらず彼女がノートをあまり取らないのは、必要な事は教科書に直接書き込むやり方を取っているからだ。
欠伸を噛み殺しながら校庭を見下ろすと、他のクラスが体育の授業中のようで、複数の生徒が一つのボールを追いかけ回しているのが見える。
ふとAの視線が一点に止まり、口元が緩む。
視線の先には、取り巻き数名と共にいる大寿の姿があった。
先生「一番前の席なのによそ見とは、いい度胸だなぁ柴田?」
Aが視線を前に戻すと、教師が腕組みをして見下ろしていた。
先生「そんなに余裕なら、この問題解けるだろ?」
大寿観察の邪魔をされたAは、あからさまに不機嫌な顔で黒板へ向かうと、数秒で答えを書き、すぐさま席へと戻り元の体勢になる。
教師は苦虫を噛み潰したような顔でAを見るが、答えが合っている為指摘が出来ず、そのまま授業の流れを戻した。
Aは先程と変わらず幸せそうな表情で、校庭にいる大寿を眺めていた。
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子持ちししゃも(プロフ) - うささん» コメントありがとうございます!大寿君夢ではありませんが、他にもいくつか書いていますので、お時間がある時に読んでいただけると嬉しいです🤗 (5月10日 10時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - 大寿の夢は初めて読みましたが、めちゃくちゃキュンキュンしてます🥰!!これからも頑張ってください! (5月10日 6時) (レス) @page50 id: 7104e26302 (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - ムーンさん» コメントありがとうございます!もうすぐ完結なので、是非最後までよろしくお願いします🙏 (5月22日 15時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - きゃー🥰大寿といよいよですね、ドキドキワクワク🤣 (5月22日 8時) (レス) @page50 id: 899026d120 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(元シオン)(プロフ) - あの場面!!だいじゅが倒された場面やぁ…タカチャンがやられる前に気絶させるのは見させたくなかったとはわかる。 (2023年5月11日 9時) (レス) @page45 id: aaf368f7e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2022年5月7日 16時