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急いで中へ戻ると、Aは勢いよく扉を開けた。
「大丈夫!?今すっごい音した…え、柚葉!?」
そこには先程までいなかった柚葉がおり、その傍らには壊れた長椅子が散らばっていた。
しかも何故か、大寿の腰の辺りには血が滲んでいる。
「っ、大寿君!血が!」
Aは大寿に駆け寄ると、心配そうにソレを見つめる。
大寿は特攻服を脱ぎ傷を確認し、ニヤリと口角を上げた。
大寿「しくじったな…柚葉。」
どうやら刺し傷は柚葉の仕業で、彼女が刺す瞬間花垣が気付いて叫び、大寿は一瞬早く動けたらしい。
そのおかげで傷は浅く、致命傷には至らなかったようだ。
Aが戸惑った表情で柚葉に目を向けると、彼女は気まずそうに視線を逸らした。
悲しいな、と大寿は呟く。
大寿「お前等は血の繋がった兄を殺そうとした……お前等の為に骨身を削るファミリーを!」
兄の言葉に、柚葉は拳にグッと力を入れると、"自分達の為じゃない"と大寿を見据える。
柚葉や八戒の為と言いつつ自分の事しか考えておらず、大寿にとって二人の事はどうでもいい存在なのだ、と柚葉は言った。
柚葉「家族という言葉で、アタシ達姉弟をずっと利用してきた…アンタは悪魔だ。」
「違うよ柚葉、大寿君は…」
大寿「A。」
大寿はAの言葉を遮り、彼女を呼ぶ。
Aが振り向くと、その瞬間大寿は彼女の首に手刀を落とし、そこでAの意識は途切れた。
八戒「A!!」
柚葉「大寿…アンタAにまで手を…!」
気を失ったAがふらりと傾き、大寿はすぐさま彼女を受け止め横抱きにする。
そのまま最前列の長椅子まで運ぶと、そこへそっと寝かせ、先程脱ぎ捨てた特攻服を拾い彼女に掛けた。
_____
どのくらい経っただろうか__Aはのっそりと身体を起こすと、ハッキリとしない意識のまま、呆けた表情で祭壇のマリア像を見つめた。
膝から何かが滑り落ちるのを感じ、視線を下ろせば、大寿の特攻服が自身に掛かっていた事に気付く。
Aが特攻服を拾いそれを抱き締めると、不意に後方から鈍い音がし、ゆっくりとそちらを振り向いた。
目に入ってきたのは柚葉と八戒、花垣に加え、九井と乾、三ツ谷、見知らぬ少年__そしてその中心で横たわる、大寿の姿だった。
「大、寿君…?」
Aが小さく呟いて立ち上がり、持っていた特攻服がパサリと床に落ちた。
その音は静かな空間によく響き、九井達は全員Aの方を振り返る。
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子持ちししゃも(プロフ) - ムーンさん» コメントありがとうございます!もうすぐ完結なので、是非最後までよろしくお願いします🙏 (5月22日 15時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - きゃー🥰大寿といよいよですね、ドキドキワクワク🤣 (5月22日 8時) (レス) @page50 id: 899026d120 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(元シオン)(プロフ) - あの場面!!だいじゅが倒された場面やぁ…タカチャンがやられる前に気絶させるのは見させたくなかったとはわかる。 (5月11日 9時) (レス) @page45 id: aaf368f7e9 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(元シオン)(プロフ) - 教会からの物音って……まさか、タカチャン達が……これは夢主がハラハラしてしまう (5月9日 17時) (レス) @page44 id: aaf368f7e9 (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - 鈴桜(元シオン)さん» いつもコメントありがとうございます🤭教会の場面は、この作品を書き始める時からイメージしてたので早く載せたいです! (2023年4月22日 10時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2022年5月7日 16時