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扉を開ける前に傘の雪を落としていると、隣に立つ大寿が小さく笑った。
「どうしたの?」
大寿「お前の鼻、寒さで赤くなってる。」
大寿はAの鼻を軽く摘まむと、傘立てに傘を挿し、さっさと中へと入ってしまった。
入口を開けたままなのは、Aへの配慮だろう。
待ってよ、とAは急いで大寿の傘の隣に自分の傘を挿すと、身体に付いた雪を払い彼の後を追った。
中へ入り大寿に追いつくが、入ってすぐの所で立ち止まっている彼に、Aは首を傾げ隣へと移動する。
「大寿君どうした…あれ?花垣君……と、八戒?」
いつもなら無人のこの時間に人がいるだけでも驚きなのだが、それに加えているはずのない人物がいる事にAは目を丸くする。
「どうしたの?二人も礼拝?」
花垣「あ、いや、えっと…」
花垣が言葉に詰まっていると、後方にいた八戒が声を張り上げ、A達の方へと走って来た。
八戒の手にはナイフが握られており、彼の視線が大寿に真っ直ぐと向いている事に気付いたAは、焦り大寿の名を呼ぶ。
大寿はAの身体を後ろ手で軽く押すと、向かってきた八戒をかわし、彼の首を鷲掴みにする。
大寿「お前は本当にポーズばっかだな。本気で殺しにきたのかと少しは期待したぞ。」
八戒は苦しさから呻き声を上げ、持っていたナイフは軽やかな音を立て床に落ちた。
大寿「辛ぇなぁ八戒、また俺の期待を裏切んのかよ……本気なら叫ぶな。静かに後ろから刺せ。」
花垣「やめろ!」
「花垣君…」
後ろから叫ぶ花垣に、大寿とAは振り返る。
大寿は八戒から手を離すと、花垣が柴家の問題に口を出すのはこれで二度目だ、と言ってニヤリと笑った。
大寿「A。」
大寿はAを呼ぶと、自身の首に巻いていたマフラーを外し彼女の首に巻きつける。
大寿「外出てろ。終わったら呼ぶ。」
「でも…」
大寿「行け。」
「…わかった。」
Aはマフラーに触れている大寿の手をそっと握ると、心配そうに八戒を一瞥し扉の外へ出た。
扉を閉めると、Aは玄関間に設置されたベンチに腰を下ろす。
だが落ち着かないのかすぐに立ち上がり、外へと繋がる扉へと向かった。
外はまだ、雪が降り続いている。
Aは小さく息を吐くと階段を数段降り、しゃがみ込んで雪玉を作り始めた。
小さな雪だるまを複数作成したところで、中から何か大きな物音が聞こえ、Aは弾かれたように立ち上がる。
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子持ちししゃも(プロフ) - ムーンさん» コメントありがとうございます!もうすぐ完結なので、是非最後までよろしくお願いします🙏 (5月22日 15時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - きゃー🥰大寿といよいよですね、ドキドキワクワク🤣 (5月22日 8時) (レス) @page50 id: 899026d120 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(元シオン)(プロフ) - あの場面!!だいじゅが倒された場面やぁ…タカチャンがやられる前に気絶させるのは見させたくなかったとはわかる。 (5月11日 9時) (レス) @page45 id: aaf368f7e9 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(元シオン)(プロフ) - 教会からの物音って……まさか、タカチャン達が……これは夢主がハラハラしてしまう (5月9日 17時) (レス) @page44 id: aaf368f7e9 (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - 鈴桜(元シオン)さん» いつもコメントありがとうございます🤭教会の場面は、この作品を書き始める時からイメージしてたので早く載せたいです! (2023年4月22日 10時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2022年5月7日 16時