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「あれは私じゃなくてコンロとまな板が悪いんだもん。」
九井「他のヤツは普通に使えてたぞ。そもそもまな板ごと切るヤツなんて聞いた事ねぇだろ。」
「斬れ味抜群の包丁だったんじゃない?」
九井「斬れ味良すぎんだろ。」
言い合う二人の横で、乾は頬を引きつらせ苦笑する。
大寿は大寿で、前髪を燃やされた教師を思い出したのか、もしくはAの当時の反応か。
どちらにせよ、何かしらを思い出して静かに口元を緩めるのだった。
_____
12月に入り、寒さが一層厳しくなった。
マンションに到着したAは、リビングの扉を開けキッチンで手を洗うと、ソファでコーヒーを飲む大寿の元へと急ぐ。
「寒い!手の感覚がない!ほら、指先が真っ赤っ赤!」
大寿「そろそろ来る頃だと思って、紅茶淹れといたぞ。」
「わぁ優しい。ありがとう大寿君。」
Aはテーブルに置かれたマグカップを手に取ると、その熱で冷えた指を暖める。
「暖かぁい…けどまだ寒い…」
Aはカップの中身が零れないように気を付けながら、大寿にピッタリと寄り添う。
大寿は脇に置いてあったブランケットを取ると、「コレでも掛けてろ」と言ってAの膝に置いた。
Aはカップをテーブルに置くと、嬉しそうにブランケットを広げ、大寿の肩から自身の肩まで回し包まった。
大寿「俺は寒くねぇぞ。」
「私が寒いの。こうやった方が暖まるし、大寿君とくっつけるじゃん。」
Aが肩に擦り寄れば、大寿は口角を少し上げ鼻で笑った。
しばらく無言のまま暖まっていると、小さな寝息が聞こえ、大寿は隣に目を向ける。
Aの瞼は閉じられ、口が半分開いた状態で涎が少し垂れていた。
大寿は親指で口元を拭ってやると、Aの頭部を自身の腿にそっと寝かせ、ブランケットを彼女の肩から足先まで掛けて整える。
顔にかかった髪を耳に掛けてやれば、くすぐったいのか、Aは少し身を捩り小さく笑った。
起きたのかと思い大寿が顔を覗き込むが、Aは相変わらず幸せそうな寝顔を浮かべたままだ。
以前よりも伸びた彼女の髪を大寿が指で梳くと、細く柔らかなそれは重力に従い、パラパラと元の位置に戻っていく。
数回繰り返していると、Aが小さく唸っている事に気が付いた。
彼女の拳はギュッと握られ、眉間には珍しく皺が寄っている。
力の込められた拳に触れようと大寿が手を伸ばすと、Aはパッと目を開け、勢い良く上体を起こした。
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子持ちししゃも(プロフ) - ムーンさん» コメントありがとうございます!もうすぐ完結なので、是非最後までよろしくお願いします🙏 (5月22日 15時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - きゃー🥰大寿といよいよですね、ドキドキワクワク🤣 (5月22日 8時) (レス) @page50 id: 899026d120 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(元シオン)(プロフ) - あの場面!!だいじゅが倒された場面やぁ…タカチャンがやられる前に気絶させるのは見させたくなかったとはわかる。 (5月11日 9時) (レス) @page45 id: aaf368f7e9 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(元シオン)(プロフ) - 教会からの物音って……まさか、タカチャン達が……これは夢主がハラハラしてしまう (5月9日 17時) (レス) @page44 id: aaf368f7e9 (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - 鈴桜(元シオン)さん» いつもコメントありがとうございます🤭教会の場面は、この作品を書き始める時からイメージしてたので早く載せたいです! (2023年4月22日 10時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2022年5月7日 16時