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車はしばらく走り、一軒の大きな屋敷に入る。
玄関先は車がぐるりと回れるほど広く、正面でA達を降ろした車は駐車場へと移動していった。
入口に立っていた使用人はお辞儀をすると、「ご案内致します」と扉を開け、先導して中を歩く。
客間に入ってすぐ、誰かがAに体当たりの如く抱き着いてきた。
Aはその人物の風貌や、微かに匂う香に覚えがあった。
「あ…あまね、様?」
あまね「お久しぶりです、A…」
顔を上げ泣きそうな笑みを向ける彼女は、産屋敷あまね__この産屋敷家の女主人である。
前世で彼女が産屋敷家に嫁いだ当時、Aは既に柱となっていた。
地位や身分は違ったが、年齢が同じだった二人は会ってすぐに意気投合した。
時間が空いた時に茶を共にしては、話に花を咲かせたものだ。
その懐かしさにあまねが涙をこぼすと、Aも釣られて目を潤ませる。
産屋敷「あまね、Aを離してあげなさい。」
ソファに座っている産屋敷に目を向け、Aは目を見開く。
Aの中の彼はまだ齢十五の少年だったが、今目の前にいる彼は二十歳を過ぎた立派な青年となっていた。
あまねが身体から離れると、Aは産屋敷の前に立ち、静かに膝を付いて頭を垂れた。
「お久しぶりでございます、御館様。水柱・鱗滝A、只今戻りました。」
Aが鱗滝と名乗ったのは、当時彼女は姓を持たない捨て子で、拾い育てたのが鱗滝だからである。
入隊して初めの頃は、鱗滝の隠し子とよく勘違いされたものだ。
産屋敷は立ち上がりAの側へ寄ると、その頭に優しく手を乗せた。
産屋敷「よく戻ってきてくれたね、A。会えるのをとても楽しみにしていたよ。また昔みたいに、あまねと仲良くしてくれるかな?」
「御館様…勿体無き御言葉…」
あまね「さぁ座って、お茶を飲みましょう。Aの為に栗羊羹を用意したんです。」
「ありがとうございます、あまね様。」
三人のやり取りを後方で静かに見ていた鋼鐵塚にも声をかけ、産屋敷とあまね、Aと鋼鐵塚と向かい合って座る。
産屋敷が合図をすると、奥から大きめの盆を持った使用人が入ってきた。
彼はテーブルにそれを置くと、静かに壁に沿って立つ。
産屋敷「A、新しく日輪刀を打ってもらうから、鋼を選びなさい。」
Aは盆に並べられた玉鋼を吟味し、直感で選び手に取った。
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子持ちししゃも(プロフ) - 藍璃さん» ありがとうございます!頑張って更新します! (4月25日 21時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
藍璃(プロフ) - 好きです!!!!更新待ってます!!!! (4月25日 18時) (レス) id: f0cad43b09 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 分かりました、更新はゆっくりでいいですよ (3月16日 8時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - ユノンさん» コメントありがとうございます。すみません、無惨様その他の過去の鬼達は出る予定がありません😭記憶の一部とかには出す予定ではありますが、夢主は半天狗と接触してないという設定で考えていたので、彼は出てきません😭ほんとすみません😭 (3月15日 22時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 子持ちししゃもさん» 半天狗の喜怒哀楽の鬼を出して欲しいです! (3月15日 15時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2023年10月19日 23時