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武道「…え?」
武道は一瞬なにが起こったのか理解出来ず、スローモーションで落ちていく腕をただジッと見つめた。
切られた本人も状況が飲み込めず、腕の切り口から吹き出す血を不思議そうに見つめている。
地面に腕が落ちた水音で、彼等はハッと我に返った。
キヨマサ「うわぁぁぁ!腕!俺の腕!」
パニックで痛みが麻痺しているのだろう。
キヨマサは膝をつき、落ちた腕を元に戻そうと必死に押し付けている。
男は指を舐めながら立ち上がると、キヨマサの正面に立つ。
そして切断された腕を彼から取り上げたかと思うと、その切り口を自身の口へと運んだ。
男「ふむ…肉質は好みではあるが、味はイマイチじゃ。」
キヨマサ「テメェ!俺の腕を…!」
男「ほれ、返してやる。我は美食家じゃからの。」
男がキヨマサの目の前に腕を放り投げると、断面が武道の方へ向き、武道は耐え切れず胃の内容物を吐き出してしまった。
男は目を閉じたまま鼻を引くつかせ、キヨマサの横を通り過ぎる。
行く先には、キヨマサと共に来た隊員複数。
隊員達は向かってくる男に後退りをし、後方から順に走り出す。
しかし男の腹から触手のようなモノが伸び、彼等の中間辺りにいた隊員一名を捕まえた。
隊員「うわぁ!?た、助け…」
男「ん〜、なんとも香しい…よもやコレが、鬼舞辻の言っていた稀血というものかえ?」
男は隊員の頬に傷を付けると、舌を這わせ流れ出す血を舐め取った。
途端、男は目を見開き、両腕を広げて空を仰ぐ。
男の表情は恍惚とし、目の焦点が定まっていない。
男「あ…あぁ…なんと芳醇な……甘さの中にほのかな酸味…そして鼻から抜ける香りはまさしく極上!一舐めしただけで腹の底から力が湧き上がるこの感覚は……至高!!」
嬉しそうにため息をつく男を、周囲は強張った表情で見つめる。
男は唇をペロリと舐めると、触手で捕らえている隊員に目を向けた。
男「そなた、名は?」
隊員「ひっ…」
男「名じゃ。人間誰しも名を持っておろう?」
隊員「あ…い、石田…」
男「石田、か……喜べ石田、我はそなたに敬意を払って、血の一滴残さず食してやる。」
男が触手を一層強く絞めると、石田と名乗った隊員は苦しそうに口から泡を吹かせる。
そして男は「邪魔したのぅ」と目を細めて武道達に視線を投げると、石田諸共何処かへと飛び去ってしまった。
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子持ちししゃも(プロフ) - 藍璃さん» ありがとうございます!頑張って更新します! (4月25日 21時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
藍璃(プロフ) - 好きです!!!!更新待ってます!!!! (4月25日 18時) (レス) id: f0cad43b09 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 分かりました、更新はゆっくりでいいですよ (3月16日 8時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
子持ちししゃも(プロフ) - ユノンさん» コメントありがとうございます。すみません、無惨様その他の過去の鬼達は出る予定がありません😭記憶の一部とかには出す予定ではありますが、夢主は半天狗と接触してないという設定で考えていたので、彼は出てきません😭ほんとすみません😭 (3月15日 22時) (レス) id: 197a8307a1 (このIDを非表示/違反報告)
ユノン - 子持ちししゃもさん» 半天狗の喜怒哀楽の鬼を出して欲しいです! (3月15日 15時) (レス) id: f5fff43cec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子持ちししゃも | 作成日時:2023年10月19日 23時