25話 ページ26
昼食を食べ終わると、一緒に持って来ていた本を開いた。
何度も読み返したのか、ページはヨレヨレになり色褪せた部分もあった。
それを読むのがAにとって唯一の楽しみだった。誰にも邪魔されず、現実を忘れられるこの時だけが。
?「ん?お前、こんな所でなにしてんの?」
貴「!」
突然かけられた言葉にAは驚きます、声のした方を見た。
其処には、首まで伸びた癖のある髪を金色に染め、制服を着崩した如何にも素行不良な青年が塔屋の上に座っていた。
先程まで寝ていたのか、欠伸をしながら先程の言葉をもう一度言った。
青年「お前、こんな所でなにしてんの?お前もサボり?」
貴「……違う。今は昼休みの時間だ。俺は先生に許可を貰って此処に来ただけだ。」
青年は興味無さげに「ふぅ〜ん。」と言うと、塔屋から降りてAの隣に座った。
そして本の中身を確認するように覗き込むと、「あっ!」と言った。
青年「それって、夢野久作の『少女地獄』だろ?俺も昔読んだ。」
貴「………そうか。俺はこの中だと、『何んでも無い』が好きだな。」
青年「そうなんだ。俺は『火星の女』が好き。」
最初はAも少し困惑気味だったが、話してみると意外と話が通じた。
Aは心の中が踊るような感じがした。誰かと好きな物で語り合うのが、こんなにも楽しいと始めて知ったからだ。
だが時間が経つのは早いもので、もう休憩時間終了のチャイムが鳴った。
貴「時間だ。悪いが、俺は教室に戻る。」
青年「えぇ〜、なんならサボっちまえよ〜。」
貴「馬鹿言うな、学生の本分は勉学だぞ。」
青年「………お前って、噂通りの奴じゃ無いんだな。ちょっと意外。」
青年は驚いた表情をしながらAを見た。
名残惜しい思いだったAだが、その言葉で(あぁ、此奴もか……。)と呆れながら立ち上がった。
それと同時にとあることを思い出し、青年の方を振り返った。
貴「……名前を聞いて無かったな。知ってると思うが、俺は徳田Aだ。」
青年「あれ、そうだったけ?まぁ、いいや。俺は康成。」
ー「川端康成だ。」ー
これが、彼の最初で最後の親友。『川端康成』との出会いだった。
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むい - 素敵な作品をありがとうございます!リアルでお忙しい中、更新ありがとうございます。これからも頑張って下さい!応援しています。 (2019年3月22日 5時) (レス) id: 89a3c53336 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎 - こんにちは!いつも楽しく読ませてもらってます!続編が出てとても嬉しいです♪そしてオチは、太宰さん!今後どの様に話が進むのか楽しみです!更新頑張って下さい! (2018年5月29日 23時) (レス) id: 4f23ad6532 (このIDを非表示/違反報告)
珈琲チョコ(プロフ) - 楽しみにしております!!作品面白くて大好きです!! (2018年5月29日 21時) (レス) id: 7d0372d436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力ねこ | 作成日時:2018年5月28日 22時