22話 ページ23
千代女の葬式には沢山の参列者が来た。
酷い雨の中、よく来たものだとAは思った。
しかも、参列者のほとんどは祖父の葬式に来た者達だった。
Aは小さな喪服を着て、父親の隣に座った。母親の方は相変わらず仕事にかまけて来ない。
Aは千代女の遺影を握りながら参列者の列を眺めた。
側から見れば、睨んでいるようにも見える。
だが、そんな目付きを無意識でしてしまうAには知るはずもなかった。
参列者はAよりも年上で、Aよりも強そうな者達ばかりだった。
貴(なんで………。)
参列者を見て、Aの中にふとした疑問が浮かんだ。
そんな時彼の疑問など知るはずもない父親が、彼の背中を軽く押した。
父親に顔を向けると、父親は黙ったまま顎で棺の方を指した。
目線をそちらに向けると、棺の前には白い布が引かれた机があり、白い百合の花が二つ置いてあった。
貴(あぁ……)
父親の無音の言葉が分かったAは、大人しく机の方へ歩いて行った。そして百合を一本取ると、棺の中に入れた。
布の上に寝かされた千代女は、Aが見た時の苦しそうな顔はなかった。あるのは貼り付けたような穏やかな顔だった。
Aはじっと棺の中を覗き込みながら、ポツリと小さく呟いた。
貴「どうして、俺だったの?おばあちゃん。」
その鮮血のような紅い瞳には、祖母はおろか光すらも宿っていなかった。
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太「こうして元異能力者千代女は死し、新しい異能力者の徳田Aが誕生したのです。」
太宰が手紙の一区切りを読み終えた頃には、探偵社内には重い沈黙が流れていた。
敦「……親って、嫌いな人間と同じ目をしてるからって理由で、こんなにも簡単に子供を育てないものなんですか?」
そんな中で口を開いた中島の手は強く握り締められていた。
そして中島の言葉に、答えられる者は誰もいなかった。
手紙を読んでいた太宰も目を伏せながら小さく首を横に振った。
江戸川が太宰に「続けて。」と言うと、太宰は再開した。
そんな空気は、ポートマフィアでも起こっていた。
芥川と樋口は路地裏で無線を通しながら聞いていた。
芥「(僕は太宰さんがポートマフィアを抜けた後も貴方にずっと支えられていただけで)
芥「……貴方のことをずっと知った気になっていたのか。」
樋「先輩……。」
芥川はギュッと奥歯を噛み締め、苦い顔をした。
樋口も中原を知った気になっていた自分が、芥川に何も言葉をかけられない自分が悔しかった。
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むい - 素敵な作品をありがとうございます!リアルでお忙しい中、更新ありがとうございます。これからも頑張って下さい!応援しています。 (2019年3月22日 5時) (レス) id: 89a3c53336 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎 - こんにちは!いつも楽しく読ませてもらってます!続編が出てとても嬉しいです♪そしてオチは、太宰さん!今後どの様に話が進むのか楽しみです!更新頑張って下さい! (2018年5月29日 23時) (レス) id: 4f23ad6532 (このIDを非表示/違反報告)
珈琲チョコ(プロフ) - 楽しみにしております!!作品面白くて大好きです!! (2018年5月29日 21時) (レス) id: 7d0372d436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力ねこ | 作成日時:2018年5月28日 22時