【çR】どなたでしたっけ？【完結】

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すぅ、と息を吸い込んだ。
隣国とはいえ、どうしてこんなにも空気が違うのか。

勢いで出てきてしまったあの国に想いを馳せれば、どの景色にも彼が一緒に写り込んでくる。それが堪らなく嫌だ。
だって、私の3年間は全て彼のために捧げてしまったようで、無意味に溶けてゆく気がするから。


はぁ、と吐き出した息は意図せずため息のような音を立てる。


まぁ、実際逃げてしまった今では、この3年間は無意味だったのだろう。

さして重くもないキャリーケースを引きずりながら、空港の長い廊下を歩いてゆく。




絶対追いかけてくると思っていた。
日本に着いてすぐ、下手したら韓国の空港で「A、どこ行く」と怒気の孕んだ声で肩を掴んでくると、勝手に期待していた。
行き先なんて一言も告げてないのに、勝手に期待した。


『はーーー…はは、そうだよねぇ…』


その甘ったるい期待が打ち砕かれた今、乾いた笑いしか出てこない。


この3年間、彼と築いたものを勝手に壊したのは私なのだから、当たり前なのだけれど。


まぁ、つまり私は
彼を追って渡った韓国を、彼との関係に行き詰まって、逃げてきてしまったのだ。

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