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「Aちゃんかい?」
「はい、そうです。少し貴方に用があって来ました。」
「君から来てくれるなんて嬉しいよ、少し出ようか。」
彼は本当に嬉しそうな顔をすると、こちらに歩いてきた。さっき私が開けたドアを閉めて、座れる椅子がある廊下の端まで一緒に歩く。
そこに座るよう促されたので、見た目より弾力のあるクッションに腰を掛けた。並んで太宰さんも座る。
先に口を開いたのは彼だった。
「それで、なんの話かな?」
「えっと、仕事の話じゃないんですけど、いいですか?」
今更、勤務時間にプライベートな話題を振ることに申し訳なさを覚える。
「このゲームを、私に持ち掛けてきた理由が知りたくて。」
「成程、理由か。」
ここに来てそれを聞くの?、という私の質問に、訝しげな様子も見せず答えてくれる彼に安心した。
「はい、あまり会話もした事ないのに、どうしてだろうって思って。」
「ふふ、気になる?」
気になるから聞いているのに、と喉まで出てきた言葉をギリギリのところで飲み込む。
意地悪く笑うその顔が、何処かむかついて、何処か素敵だと思った。
「気になります、とっても。」
恥を忍んで質問を折り返すと、太宰さんの顔が近付いてきた。少し慣れてきたはずのこの距離に、何処かそわそわしてしまう。
意地悪く歪められた口元がすっ、と直線的になって、表情が真剣になる様がやけにゆったりと見える。
「それはね、言いたいけれど、」
そこで言葉を濁し、少し下を見て、
「もう少し待ってくれないかな?」
さっきとは違う困ったような笑みを浮かべて、もう一度目を合わせた。
__私は自意識過剰では無いし、陳腐な恋愛小説の主人公のように、鈍感でも無かった。
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つじ(プロフ) - 黒糖。さん» お返事遅れました。過去の作品ですが、読んでいただけて本当に嬉しく思います!コメントありがとうございます。 (2021年7月31日 14時) (レス) id: 87b029d90b (このIDを非表示/違反報告)
黒糖。 - これまで見てきた太宰さんの小説上位に食い込みました....!!いつも余裕そうな人が見せる照れ顔って最高に刺さりますよね....←応援してます! (2021年7月26日 17時) (レス) id: e962db8aef (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - カコさん» わわわ、ありがとうございます!嬉しいです!最後まで読んでいただき、感謝です! (2018年7月28日 23時) (レス) id: 349231008c (このIDを非表示/違反報告)
カコ - かわいかったあああ!!もう、やっとくっついたかって感じだった!素敵なお話ありがとうございました! (2018年7月28日 23時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - 長月冬麻さん» わー!ありがとうございます、明日の朝と言っていたのですが、明日の夜になりそうです…頑張ります、ありがとうございます!最後の一言は殺し文句ですよ、無事禿げました、ありがとうございます!、 (2018年7月27日 23時) (レス) id: 0632503f0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年7月15日 20時