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「少し外に出ようか。」
私はそれに頷きだけを返して、立ち上がりながらポケットから出したハンカチで顔を抑える。
片手で砂色の外套の裾を握る。
周りの人に見られないように気を使いながら歩いてくれる彼に進行を任せて、ただ流されるように歩いた。
ある程度歩いて着いたのは、昨日も座ったあの椅子がある、廊下の端だった。
昨日も座ったその場所に腰を下ろす。
今日も隣には太宰さんが座っている。
私を落ち着かせようと背中に手を添えてくれた。
けれど、驚きからか、大きく肩を震わせてしまった。
「あ、ごめんなさ、…っ」
「ああ、いいんだよ、気にしないで。驚かせてごめんね。」
謝る為に見上げたその顔が、少し悲しそうだった。
怖かったわけでも嫌だった訳でもないのに、驚いしまっただけだ、そう説明することが出来なかった。
さすってくれようとしたのか、さっき背中に添えられた手は離れてしまった。
それがどうしようもなく寂しくて、また涙があふれる。
「ちょっと待っててね。」
彼はそう言って立ち上がり、何処かへ行こうとした。
無意識に、その裾を掴んでしまう。
「行かないで、…ひとりに、しないで」
_縋るような気持ちで懇願した。
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つじ(プロフ) - 黒糖。さん» お返事遅れました。過去の作品ですが、読んでいただけて本当に嬉しく思います!コメントありがとうございます。 (2021年7月31日 14時) (レス) id: 87b029d90b (このIDを非表示/違反報告)
黒糖。 - これまで見てきた太宰さんの小説上位に食い込みました....!!いつも余裕そうな人が見せる照れ顔って最高に刺さりますよね....←応援してます! (2021年7月26日 17時) (レス) id: e962db8aef (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - カコさん» わわわ、ありがとうございます!嬉しいです!最後まで読んでいただき、感謝です! (2018年7月28日 23時) (レス) id: 349231008c (このIDを非表示/違反報告)
カコ - かわいかったあああ!!もう、やっとくっついたかって感じだった!素敵なお話ありがとうございました! (2018年7月28日 23時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - 長月冬麻さん» わー!ありがとうございます、明日の朝と言っていたのですが、明日の夜になりそうです…頑張ります、ありがとうございます!最後の一言は殺し文句ですよ、無事禿げました、ありがとうございます!、 (2018年7月27日 23時) (レス) id: 0632503f0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年7月15日 20時