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「…や、まの、さん」


きっとまだ赤みを帯びたままの顔をそちらへ向けた。何か、何か言い訳しなきゃ。いくら昼休憩とはいえ今は勤務中なのだから。

あの、と私が口を開く前に、相変わらず饒舌な彼が口を開いた。

「こんにちは、山野さん。」

「あら、こんにちは。やっと来たのね、」

「いやぁ、寝坊してしまって。」

「ふふ、そう。私、お邪魔だったかしら?」

「いえ、彼女の髪に付いていたホコリを取ってあげただけなので。お気になさらず。」


と、太宰さんは私が言い訳を始める前に会話を終えて、室内から出ていってしまった。

…流石だなぁ。山野さん来た途端にいつもの顔に戻ったし。

さっき蓋をされてしまったサラダにもう一度手をつける。そして残っていた赤いミニトマトを口に放り込んだ。ぷち、と口の中に甘酸っぱさが広がった。

まだ、顔の熱が引かない。今のことで、また少し期待してしまう。

そこで、はっとして私は声を出した。

「山野さん、お疲れ様です、」

挨拶は私のライフワークなのに。忘れてしまうなんて、どれだけふわふわしてるの。


「ふふ、お疲れ様。…、Aちゃんも中々やるわねぇ。」

「な、何がですか?」

「相手があの子だなんて、驚いちゃったわ」


クス、と丸い頬を緩めた山野さんは今日も人当たりがいい。

だけど、なんのことだ本当に。お付き合いなんてしてませんよ、と必死に否定しながらぼんやりと。彼とそういう関係になる未来を想像、というか妄想、というか。思い浮かべてしまう恥ずかしい頭を抑え込むように、レタスに向かって少し乱暴にフォークを突き刺した。

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設定タグ:文スト , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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こめこ(プロフ) - どんぐりさん» お読み頂けて嬉しいです、コメントありがとうございます!どんぐりさんの作品大好きなので、5割増くらいで嬉しいです (2019年3月17日 8時) (レス) id: 0632503f0e (このIDを非表示/違反報告)
どんぐり(プロフ) - コメント失礼します。二人の駆け引きと遠回りな恋模様が見ていて面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (2019年3月17日 2時) (レス) id: af82a43e6e (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - カコさん» カコさん、いつもありがとうございます!!そう言っていただけて嬉しいです、素直じゃない感じをコンセプトにしていたので!フロチャも楽しんで頂ければな、と思います! (2018年7月10日 21時) (レス) id: 349231008c (このIDを非表示/違反報告)
カコ - めっちゃ良かった・・・どストレートじゃない、回りくどい感じが凄く好きです。骸砦の方も近いうちに読ませていただくつもりです。 (2018年7月10日 20時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - 雪兎さん» ありがとうございます!おまけ、できるだけ早く書きますね。次はもっと面白いものが書けるよう頑張ります! (2018年6月10日 11時) (レス) id: 349231008c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こめこ | 作成日時:2018年5月4日 21時

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