【文スト】｢可｣｢能｣｢世｣｢界｣ (ページ22)

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一方その頃、敦はしつこく芥川のいる場所を部下で芥川に良く慕っていた樋口に聞いていた。

それはまるで＿＿＿現実を頑なに受け入れないような子供のように。

「だーかーらー芥川はどこにいるかって僕は聞いてんの！」

「ふえぇ。わっ私だって知りませんよ！私が聞いたのは芥川さんが珍しく私にさよならを言ったから死にに行くのかと思ったんですよ」

「はああああ？えちょどーゆー意味」

二人とも気が動転してきちんと喋れなくなっている。
その時、樋口と敦の通信機が鳴った。

『芥川さんの、死体発見致しました』

立原の硬(こわば)った声が通信機から漏れ出す。

二人は息を失った。

敦の指がぴくり、と動いた。

「敦……さん？」

樋口が心配そうに敦の顔を覗き込む。
敦は細かく震えていた。

「首領に……命令を……貰わなきゃ……」

敦はそう云い部屋から出た。

「あッ敦さん！私も行きます」

樋口がついて行こうとする。

「樋口さんはこなくて善いんだ」

敦はそう云い部屋から飛び出した。
もう元に戻ることはできない。

首領執務室の前。
敦が扉を叩こうとした時、扉の向こうから「入れ」と声がした。
部屋には珍しく中也はおらず、太宰はこちらに背を向けていた。

「太…宰さん……」

敦の声が弱々しくなる。

「命……令を…ください」

太宰が振り向く。

「敦君。芥川君の仇を取るまで君の意思で動け。黒蜥蜴も、遊撃隊も自由に使うといい。君にはその資格がある。これが私からの命令だ」

太宰の目には氷河のような冷たい光。

「判り……ました」

敦が部屋から出ていく。
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敦の目にはもう弱々しい光は宿っていない。敦の目に宿るのは青白い復讐の炎。

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