ヨコハマ市街の道端なう ページ21
1、
鏡花奪還から数日経った頃。
芥川は野暮用でヨコハマの街を歩いていた。
不意に視界の端に黒い人影が映った。
「?」
その人影には見覚えがあった。
芥川の思考は一つの結論に辿り着いた。
其れは、今芥川に討伐命令の出ている標的、“偽”芥川だった。
彼我との距離はざっと十m程。標的を刺激しないよう、そっと近づく。そして、
「おい」
と声をかけ、肩に手を掛けた途端、“偽”の芥川は ガバッと振り返り、芥川の方をじっと見た。
何も云わない。
「僕は芥川」
そう一言小さく言った。
“偽”の芥川は驚く様子もなく近くの袋小路に入っていった。
「おい」
芥川の声を気にすることなく“偽”の芥川は袋小路の行き止まりで芥川の方に振り返った。
「首領の命令は絶対。僕のすることは今生で最後のことに……なるだろう」
その瞬間、“偽”の芥川の気配が変わった。
まるで___追い詰められ、死を悟ったような闘犬の気配。
「⁉︎」
「羅生門__
“偽”芥川の外套が顎の怪物に変わる。
「‼︎」
芥川が身構える。芥川がいつも使う顎よりもさらに大きい獄門顎。
「羅生門___空間断絶」
生身で食らったらひと堪りもない。おおよそこの技は一人対大人数で使う技だ。いくら芥川の異能が強いからとはいえ、これは度が過ぎている。
眉間に皺を寄せ急所を黒布で守り。
反撃のために黒布を展開する。
だが、その芥川の表情はすぐに変わる事になる。
“偽”芥川の作り出した獄門顎は所有者である“偽”芥川の体をそのまま喰らった。
“偽”芥川は悲鳴を上げなかった。半分人間とわかる程度になった“偽”芥川。まだ絶命していないようだった。
「………敦を………地獄………から…救っ……て………狂っ……た……命令…か……ら」
ㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤ
ことり。
ㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤ
“偽”芥川の短躯が血溜まりに沈む。
漆黒の悪鬼。走狗。ポートマフィアの黒き魔狗の最期だった。
芥川はその場で立ち尽くした。
車の音がやけに騒々しかった。
・
16人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
珀秋そら(プロフ) - 感想正座待機でお待ちしておりますべ (2022年8月9日 18時) (レス) id: ae0531e6bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:空白時 | 作成日時:2021年7月9日 13時