君を、喰べたい【及川徹】

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こんな状態で数学なんて、頭に入るはずがない





渋々ノートと教科書を開くも
シャーペンを持つ手が震え、問1から全く進めない私を彼は面白がっているかのように眺めていた







「…わかんないの？A？」







違う！！



わからないんじゃない
気が散って何も考えれないだけだ






「これはさ、sinとcosをペアで考えて微分から逆算するんだよ…？」








わざとやっているんだと分かっていても、あの声を耳元で囁かれると良からぬ妄想が膨らんでしまう



だって、キスしたり
それ以上をした時も彼はこんな風に耳元で囁いていたから・・







「…っ。
ちょっと…あんまり耳の近くで喋らないで下さいよ…
気が散ります。」







本当は初めから課題をやらせるつもりなんか更々無いのでは？
そう思えるような胡散臭い笑顔で「そっか、擽ったいよね？ごめん」と笑う彼に私は思惑通り振り回されている





「…あの、及川さん。
これって、これを消去するように連立すればいいんですよね？」






正直、数3は大嫌いだし
赤点を覚悟している程に授業に付いていけていない
だからと言って及川さんに教えてもらうのでは全く身に入る気がしなかった


早く切り上げて、帰るのが最善策だと思い私は気を取り直して問1の続きに取り掛かる





「可愛く、及川先生って呼んでくれたら、教えてあげるよ？」




「……………。」







「…な、なんて嘘嘘！そんな睨まないでよー。
そうそう、消去してこの両端を積分すれば出来るはずだよ！」








全く、悪ふざけも程々にしてほしいものだ
こっちは口から心臓飛び出しそうな思いでシャーペンを握っているのだから

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