エピローグ ページ33
病室にこだます、赤ん坊の泣き声。
優しい母の声、涙ぐんだ父の声。
そして、へその緒が断ち切られる。
やがで赤ん坊は成長し、明るい一人っ子になる。
しかし成長の喜びと引き換えに、母がこの世を去る。
幸せは暴落し、静かな父子家庭になる。
一度閉ざされた心も、ひとりの男の子によって開けられる。
しかしまた、扉は閉まりかけようとしている。
明るい視界の中で、今までの記憶が蘇る。
嬉しかったことも、哀しかったことも、すべて私の人生。
このままあの大地を飾る星になれるんだと思ってた。
___それなのに。
急に視界が暗くなって、あの香りが私を包んだ。
懐かしい、待っていた、でも会いたくなかった。
矛盾した気持ちが、私たちを優しく包む。
「……まだ返事聞いてないですけど」
こんな第一声、きみしかいないって分かってる。
会いたくて仕方なかったけど、ずっと片隅にいた人。
閉まる寸前の扉を、開けてくれたきみ。
「俺、Aさんのこと離したくないっス」
いつも見ていたきみより、何倍も大きく感じる。
華やかに香る柔軟剤と、優しいきみの言葉。
「私も離れたくない」
仕返しのように、私も強くきみを抱きしめる。
どんなに辛いことだって、投げ出したいことだって、きみとだったら乗り越えていける。
どんなことだって、自分らしく生きられる。
私たちの元に訪れたのは、涼しい秋。
9月9日。
私たちの屋上は、まだ夏のまま。
-END-
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ハルジオン(プロフ) - 太宰亜里沙さん» コメントありがとうごさいます。楽しんでいただけてなによりです! (2020年7月14日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気読みしちゃいました!静かな夏の描写や素敵な影山をみれてとても読んでいて楽しかったです! (2020年7月14日 12時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ハルジオン(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます。夏の描写はかなり気を使っていたので、そのように言っていただけて光栄です! (2020年7月11日 13時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - 影山くんと主人公の不思議な関係、対して、鮮明な夏の描写。素敵な文章に幾度も胸をきゅっと締め付けられるようでした。最後の文章で、一気に世界が色づくような錯覚を覚え、思わず泣きたくなるような気持ちになりました…! (2020年7月11日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルジオン | 作成日時:2020年6月21日 13時