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今日の四時間目は国語だった。
授業で寝たことなんかないけど、眠くなることは何回かある。
でも今日はそんなのなくて、ひたすらに窓の外を見ていた。
誰かがいるわけでも、何かの用事があるわけでもないのに。
何かにひきつられるように、ぼーっと眺めていた。
授業が終わると、颯爽と屋上へ向かった。
きみは来ない。分かっていても、行きたい理由がある。
教室を勢いよく飛び出し、曲がり角でぶつかっても気づかない。
重い扉を軽々と開け、夜降った雨の水溜まりを飛び越える。
そびえ立つフェンスを乗り越え、貯水タンクの隣に立った。
夏の残骸と秋の知らせが、風を通して身に染みる。
田舎の景色はとても綺麗で、透き通った空気が鼻を喜ばせる。
『幸せになってね』
どこからか聞こえてくる、私だけにしか聞こえない声。
小鳥のさえずり、秋虫の共鳴。
ふと開いた、9月9日止まりのトーク画面。
誰も見るはずがない、既読なんてつかない画面に、私は送った。
“ありがとう。好きな人ができたよ”
そして私は、この大地に溶けた。
__はずだった。
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ハルジオン(プロフ) - 太宰亜里沙さん» コメントありがとうごさいます。楽しんでいただけてなによりです! (2020年7月14日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気読みしちゃいました!静かな夏の描写や素敵な影山をみれてとても読んでいて楽しかったです! (2020年7月14日 12時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ハルジオン(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます。夏の描写はかなり気を使っていたので、そのように言っていただけて光栄です! (2020年7月11日 13時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - 影山くんと主人公の不思議な関係、対して、鮮明な夏の描写。素敵な文章に幾度も胸をきゅっと締め付けられるようでした。最後の文章で、一気に世界が色づくような錯覚を覚え、思わず泣きたくなるような気持ちになりました…! (2020年7月11日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルジオン | 作成日時:2020年6月21日 13時