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花火大会、当日。

待ち合わせの場所に行くと、既に影山くん……と背の高い眼鏡の子がいた。


「あの……」


近くに行って話しかけてみると、眼鏡くんは颯爽と逃げていった。


「うっス」


しゃがんでいた影山くんは立ち上がり、軽く会釈をする。

見慣れない私服姿はとてもお洒落。


「ねえ、さっきの子って……」

「タクシーとスタイリスト」

「……なるほど」


影山くんらしい回答に微笑ましくなる。

早速、花火大会の会場へと向かった。


歩行者天国になっていて、すれちがう人々は浴衣を着ていた。

私は私服。シンプルで、どこにでもいる格好。

お洒落しておけば良かったなと、後悔している。


「何食べたいっスか?」


道路脇には沢山の屋台が並んでいる。

りんご飴にポテトにドリンク。

金魚すくいに輪投げに射的。

年に一度の花火大会は熱気で溢れている。


「じゃあ……」と私が指したのはかき氷。

ガリガリのじゃなくて、ふわふわのかき氷。

シロップは大好きなレモン。


「頭痛くならないんスか?」

ただでさえ固まっている表情筋が、もっと強ばる。


「影山くんみたいに一気に食べないからね」


お得意気に言うと、ぐぬぬと効果音が聞こえてきた。

彼といると笑いが込み上げてくる。


影山くんといることが、私の幸せなのかもしれない。

それは恋愛でも友情でもなくて、言葉にはできない“何か”がある。

彼がいなかったら、今の私は冷たいまま。




そんなことを考えながらカステラの屋台に並んでいると、人が集まってきた。

このカステラは大人気のよう。


「人いっぱいいるから、下で待ってるね」

私は買う予定ないし、ちょっと歩き疲れた。

影山くんの返事を聞いてから、広場で座った。


時計を見ると、始まるまであと15分。



それから少しして影山くんが戻ってきた。

カステラを頬張る影山くんは、屋上で見ている景色と変わらない。


「お腹壊すよ」

「消化早いんで大丈夫っス」


そのとき、右から声が聞こえた。


「影山じゃん」

「お前、やっぱり来てたのか!」


薄暗くてよくみえないけど、背の高い子と低い子が影山くんに話しかけていた。

友達、かな?


「うっせーな。いいだろ別に」

「良くない!」


影山くんと聞き覚えのある声が重なる。

「まあまあ……」と仲介に入る男の子。

二人は牙を見せ合う中、仲介くんが影山くんに言った。



「影山、あの人誰?」

第八章 迫り来る秋→←▽



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ハルジオン(プロフ) - 太宰亜里沙さん» コメントありがとうごさいます。楽しんでいただけてなによりです! (2020年7月14日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気読みしちゃいました!静かな夏の描写や素敵な影山をみれてとても読んでいて楽しかったです! (2020年7月14日 12時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ハルジオン(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます。夏の描写はかなり気を使っていたので、そのように言っていただけて光栄です! (2020年7月11日 13時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - 影山くんと主人公の不思議な関係、対して、鮮明な夏の描写。素敵な文章に幾度も胸をきゅっと締め付けられるようでした。最後の文章で、一気に世界が色づくような錯覚を覚え、思わず泣きたくなるような気持ちになりました…! (2020年7月11日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハルジオン | 作成日時:2020年6月21日 13時

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