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第四章 個人領域 ページ13

太陽が近づき、暑さも更に増してきた夏本番。

夕方にも関わらず、窓から入ってくる生ぬるい風が、首元を湿気らせる。


“活動記録”と題されたプリントの書き込みが終わり、体をぐっと伸ばす。

ふと、机にうつ伏せている男の子が見えた。


さっき、委員会が終わったばかり。

私が委員長を務めているのは図書委員会。

大人しくて静かな子ばかりで、私には心地いい空間。



「ねえ、ちょっと」

男の子に近寄って、肩を叩いてみる。

これじゃあ意味がない。ぐっすり寝ている模様。


「……ねえ、もう終わったよ」

今度は少し強めに背中を叩いてみた。

すると、彼はむくっと起き上がり体を伸ばした。

起きたての猫を見ている感じ。


「あのさ、これ書いて、今週中に私に提出して」

そう言い、委員会後 皆に渡したプリントを彼にも渡した。

私の声かけに右手がスッと出て来、プリントを受け取った。


間違いなくあの子だ、瞬間にそう思った。



「あ、屋上の人」

彼の口からも、同じニュアンスの言葉が漏れた。





ああ、そっか。だから見覚えのある顔だったんだ。

……影山くんだっけ。


帰り道、そんな事を思いながら家に向かう。

委員会の時いつもうつ伏せてるから、顔なんて知らなかった。

それに図書委員会なんて緩いし、苗字程度知ってれば十分。


彼と知り合ったばかりなのに、今やどこか親近感がある。

私は彼と何かしらの運があるのかな。



「先輩」

「!?」

ポケットからスマホを取り出した時、後ろから声がした。

振り返ると汗だくの影山くんが立っていた。


「な、何?」

「コレ、もう書いたんで」

そう言って、差し出された紙。

ああ、さっき渡したやつじゃん。

今渡されても困るんだけど、と思いつつ受け取る。


丁寧に鞄にしまい、その場を立ち去ろうとしたとき。

「待って」と、彼に止められた。


「俺もこっちなんで、一緒にいいですか……?」

目線は斜め下に向いていて、表情が難しい。


「うん、まあ、いいけど……」

だって特に断る理由もないし。



夕陽に背を向け、家に向かって歩き出した。

▽→←▽



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ハルジオン(プロフ) - 太宰亜里沙さん» コメントありがとうごさいます。楽しんでいただけてなによりです! (2020年7月14日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気読みしちゃいました!静かな夏の描写や素敵な影山をみれてとても読んでいて楽しかったです! (2020年7月14日 12時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ハルジオン(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます。夏の描写はかなり気を使っていたので、そのように言っていただけて光栄です! (2020年7月11日 13時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - 影山くんと主人公の不思議な関係、対して、鮮明な夏の描写。素敵な文章に幾度も胸をきゅっと締め付けられるようでした。最後の文章で、一気に世界が色づくような錯覚を覚え、思わず泣きたくなるような気持ちになりました…! (2020年7月11日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハルジオン | 作成日時:2020年6月21日 13時

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