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もぐもぐもぐもぐ……。


ひたすらに惣菜を噛む。

ただ、ひたすらに。


夏休み明けから数日。

暑さは治まり、カラっとした空気が髪を揺らす。

あれから一度も影山くんとは話してない。

返事は今じゃなくていいって言われたけど、ずっとそのことを考えている。


メールも来ないし、送る気にもなれない。

屋上にも姿を出さなくなった。

だからと言ってわざわざ教室に行くのも、なんだか違う。


影山くんと出会う前みたいに、ひたすら箸を動かす。


すると重たい扉が開いた。

「もしかして」と思って振り向いてみたけど、それは正反対の人物だった。


「やっぱりここにいた」

親友に話しかけるように、満面の笑みで向かってくるのは広尾雨夏。

ここ最近になってからやけに関わってくる。本当に嫌。


「大事な話があるから、弁当しまって?」

「…………」


彼女からは嫌な予感がした。

根拠はないけど、直感的にそう感じた。


「昼休み終わるし、もう帰ろ? 話は今度聞くから」

でも、まだ昼休み終了までたっぷり時間がある。


「Aは逃げるのが上手いね。バレてるけど」


耳元で囁かれ、悪寒が走る。

私の話なんて聞く耳も持たず、話を進めた。


「男の子と花火大会行ったんだってね。Aもモテ期突入?」

「…………」

「私さー、二人が居るところところ見ちゃって!」

「……何が言いたいの」


私がそう言うと、笑顔だった彼女が突然真顔になった。


「分かんないの? 後輩振り回してさー、終いにはカップル気取って。

ほんと、あの子可哀想だわ」


最後の一文にエコーがかかる。

何回も脳内でリピートされて、鬱陶しい。


「本人が喋ってるところ聞いちゃったんだよね。『暗いしノリ悪い』って」

「…………」


雨夏はどこまでも悪党。

影山くんがそんなこと言うはずない。




私は信じない。


そう決めたのになぜか、廊下でみた彼が冷たかった。

▽→←第八章 迫り来る秋



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ハルジオン(プロフ) - 太宰亜里沙さん» コメントありがとうごさいます。楽しんでいただけてなによりです! (2020年7月14日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気読みしちゃいました!静かな夏の描写や素敵な影山をみれてとても読んでいて楽しかったです! (2020年7月14日 12時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ハルジオン(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます。夏の描写はかなり気を使っていたので、そのように言っていただけて光栄です! (2020年7月11日 13時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - 影山くんと主人公の不思議な関係、対して、鮮明な夏の描写。素敵な文章に幾度も胸をきゅっと締め付けられるようでした。最後の文章で、一気に世界が色づくような錯覚を覚え、思わず泣きたくなるような気持ちになりました…! (2020年7月11日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハルジオン | 作成日時:2020年6月21日 13時

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