始まりの朝 ページ1
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「忠義ー!そろそろ兄ちゃん達行ってまうからな!」
「え、ちょぉ待って!あと一口でご飯食べ終わんねん!」
玄関先で張り上げられたきみくんの声を聞き慌てて最後に残った一口(正確にはもっとあるけど)を口の中に放り込み、お茶で流してドタドタと玄関の方に向かえば、2人の兄ちゃん達は呆れたように苦笑して僕の頭をポンポンと撫でた。
「…ったく。そない慌てて食うたら喉つまらせるって前に言うたやろ?何かあった後じゃ遅いんやから気ぃつけなアカンで」
「…やって。2人がもう行ってまうとか言うから…」
「アホ言え。俺らが忠義の見送り待たんわけがないやんか。…まだちょっとだけ時間あるから、ゆっくり食うてくれればよかったんに…」
困ったように眉を下げたきみくんに何だか申し訳なくなって「ごめんなさい」て言葉がスルリと喉を出かかった時、きみくんの隣におった信ちゃんがアホかと鋭い音をたててきみくんの頭を叩いた。
「お前がタツ急かそうとすること言うたからアカンのやんけ!ちょっとは考えろや!」
「…せやって、少しでも長い間忠義に見送られたいやんか!また家帰って来るまで会えへんねんぞ!」
「せやからお前はアホやねん…。ちゃんとタツの見送りの時間なら、充分満足出来るようにたっぷり時間とったったわ」
「…おぉ。さすがヒナ」
目の前で繰り広げられる兄ちゃん達の漫才のようなやり取りに、思わずくつくつと笑いがこみ上げてきてしまう。
「…フフ。やっぱり兄ちゃん達最高やぁ。…気をつけて、お仕事頑張ってな?」
「おおお忠義ぃぃ!やっぱりお前は俺らの天使やぁぁ!俺もう会社行きたない!」
ごめんなぁぁぁせっかくの忠義の記念すべき入学式、見に行けんくて。
ガバァって僕の体を抱え込むように抱きついてきたきみくんが、グズ、と大きい音をたてて鼻を鳴らす。
「んふふ。でも2人とも、最後の最後まで来れるように掛け合ってくれてたんやろ?…その気持ちだけで、僕は充分嬉しいで」
思ったままに自分の感情を素直に吐き出せば、またしてもきみくんは端正な顔をグシャりと歪め僕の頭を何度も撫でてくれた。
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あらと∞(プロフ) - 緑夏さん» 緑夏さん、いつも温かいコメントをありがとうございます!いえいえ、そんなとんでもない!私の方こそ、今も毎日緑夏さんのtorn小説をひっそりと楽しんでいるというのになんのコメントも送れていないで…申し訳ないです汗 オマケ話も、ご期待に添えるよう頑張りますね^^ (2017年8月17日 23時) (レス) id: c9fd3073c9 (このIDを非表示/違反報告)
緑夏(プロフ) - あらとさん、完結おめでとうございます^ ^ ずっと読ませてもらっていたんですけど、完結したタイミングでのコメントになってしまい申し訳ないです…。 鈍感で少し天然な大倉くんすごく可愛くて癒されました♪ おまけ話も楽しみにしてます! (2017年8月17日 21時) (レス) id: b28e673c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あらと∞ | 作成日時:2017年7月15日 22時