12 君臨するは、神＊＊ ページ22
(……何故、彼らを助けたのか。)
今まで考えた事もなかった自問自答に、思考回路が止まってしまう。
和らいでいく僕の眼光を見ていたのか、女はくくっと笑い、再び背を向けた。
「我は全世界の事実を知っておる。しかし、そこに住まう人間が何を感じ、何を考えているかなど理解できぬ。」
そう言って言葉を切り、風にそよぐ芝生を愛しそうに見つめる。
「…雲の男よ、貴殿は秋村Aをいかなる方法で生かすつもりだ。」
「……っ、」
再び出された問いに、息が詰まるのを感じた。
僕の思惑を、見透かしているのだろうか。
再び耳に入った笑い声に、やられっぱなしでいる事の悔しさがこみあげ、考えるより先に反論していた。
「……残念だけど、弱くて使えない人間を手元に
置いておくつもりは＿＿＿」
「本当に、そうか？」
いつの間にか、青の瞳で射抜かれていた。
強い口調で答えを遮られ、彼女の言葉を待つ。
「…人の思いを読み取らずとも、見当位はつく。
…Aが完治した後、唯一頼れるボンゴレにでも預けるつもりなのだろう？」
無意識に、びくりと肩が跳ねた。
まさに、図星だった。
口を閉ざした僕に、さらに神は続ける。
「成る程…、一般人にマフィアとしてのむごい一面を見せる訳には行かぬ。
蝶よ華よと育て上げ、遠くない未来に野放しにするつもりか。」
一言一句合っているとも言える台詞に、ちらりと彼女を見れば、その表情はどこか切なそうだった。
ただの妖艶な人間には出せない儚さに、不覚にも心臓が高鳴る。
「あの娘がその程度の器で収まると思うか？」
「…どういう事？」
「自らが死に、世界さえ失ったというのに。
何時までも何時までも悪夢を見る程、あの娘は愛していたのだ。
…故郷を、友人を、家族を。」
"家族"＿＿＿＿
その言葉に、僕の瞳が微かに揺れたのがわかったのか、神は一つ目の問いを繰り返した。
「アラウディ、答えぬか。
…なぜ貴殿は、秋村Aを助けた？」
幼子を諭すような口調で聞かれ、固く結んでいた唇を開こうとした時。
ふっ、と辺りの風景が消えていく。
「おや、そろそろか…。」
霧のように消える青空を見上げる僕とは違い、神は名残惜しげに呟く。
そして、訴えるような目を向け、言った。
「……アラウディ。」
"あの娘には、もう帰る場所がどこにも無いのだぞ？"
目が覚めてからしばらく、頭痛が止まらない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千桜(*_*)(プロフ) - 続きがとても気になります！続編楽しみです！ (2013年12月17日 10時) (
レス) id: e811a56b71 (このIDを非表示/違反報告)
音葉(プロフ) - このお話、とっても大好きです！更新楽しみにしてますね！！影ながら見守っています(=ﾟωﾟ)ﾉ (2013年7月29日 12時) (レス) id: 79ec10fac5 (このIDを非表示/違反報告)
霙@kutiki(プロフ) - ギャグ小説の方からジャンプしてきました！こっちもとても面白くて、続きがとても楽しみです！！更新頑張って下さい応援しています♪p(^-^)q (2013年7月21日 16時) (レス) id: 7b0e251a07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢霧 | 作成日時：2013年7月3日 17時
