33話目 ページ44
影剣視点
また、目が覚めた。
でも、今回はちゃんと体が動く。
体を起こして、周りを見る。
誰もいない。
今が昼なのか夜なのかを知りたくて立ち上がって襖を開ける。
空には綺麗な月があった。
全てを浄化してくれるような綺麗な光。
自然と口が動く。
「♪ 夢実る、蒼月の夜
貴女はどこにいるの?
泣き声が響くこの地の上。
思念と怨念が渦巻く世界。
やはり、無駄だったのかな、無謀だったの?
ただ、貴女と共に生きてみたかった。
この蒼き月を、貴女と共にみてみたかった。
ただ、そう、それだけだった。
あの方を殺した人間を信じてみたかった。
それすらも許されないの?
涙はいつまでも止まることは知らないで。
ずっと、いつまでも、流れ続けるのかな。
最後に貴女をみた。それは、いつだったかな
最期の顔はなぜ笑っていたのかな?
僕を見て、なぜ笑ってたのかな?
涙を含んだ笑みを」
歌い終わると視線を感じた。
その視線を辿ると五虎退がいた。
「ごこ?」
そう呼ぶと五虎退は驚いた顔をした。
その顔を見てハッとした。
ごこはアソコでのあだ名であって、
ここの本丸でのあだ名じゃない。
ましてや、この子は僕が泣かせてしまった子。
僕が軽々しく呼んでいいわけがない。
「アー、ごめんね。五虎退。こんな夜中にどうしたの?君のお兄さんは?ひとり?」
そう聞くと五虎退は
五「い、いえ!気にしてません!
えっと、一兄はいません。ひとりです。
それが、虎くんがひとりいなくなってしまって」
と言った。
そうか、あの小虎がいなくなったのか。
よし。
「そっか。よし!」
そう言って五虎退の手をひく。そして
「もう遅い。一緒に探そっか」
と言った。
出来るだけ明るくいったけど、
内心はとてもハラハラしてる。
断られたらどうしよう。
もし、手を振り張られたら?
とても、こわい。
でも、今はもう夜。この子一人では危ない。
五「い、いいんですか?」
と五虎退は聞いてきた。
それに僕は
「もちろんだよ」
と笑みを浮かべながら答え、歩き出した
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作者名:黒狼 | 作成日時:2016年12月31日 15時